Erv's Letters index Text by Erv Yamaguchi


ロードスポーツ市場(2) 2004年12月16日 23:39

 http://www.acura.com/(アキュラのホームページ)

 http://www.lexus.com/(レクサスのホームページ)

 前回の日記で私が語ったことはウソではない。
 ↑に紹介したホームページを御覧になって頂きたい。アキュラのホームページにホンダの名前があるだろうか?  レクサスのホームページにトヨタの名前があるだろうか?  もしあったならば、ブランドバリューを失墜させていただろう。

 しかし、前回の私の日記を読んで、次のような疑問を感じた方もいたハズである。それは、「それまでの名前を捨てて、新しい名前を認知させるには、金がかかるのではないか?」という疑問である。
 もちろん金はかかる。特にアキュラは、それまでのホンダのディーラー網を使わなかったので、大変なコストがかかった。
 しかし、大企業が社名変更することは、実は安上がりな側面もあるのだ。それはマスコミである。
 例えば小さな会社が社名変更しても誰も気付かないが、大きな会社が社名変更すると、マスコミが騒ぎ出し、新しい名前は一気に広まり、むしろ安上がりなパブリシティーとなるのである。
 という訳で、フルラインに手を出してブランドバリューを失墜させたホンダとヤマハは、是非社名変更して頂きたいものだ。

 さ〜てお待ちかね! この日記の読者にもワンフー(ファン)は多いだろう、カワサキとスズキについて語ろう。

 まずはカワサキから行こう。カワサキは、以前から言っているように、2輪部門をスピンオフすべきである。しかし、元の会社は社名変更すべきだが、2輪部門はそのまま『カワサキ』を名乗っていいだろう。
 例えばである。ニューヨークの地下鉄は川崎製のようだが、地下鉄で通勤するニューヨーカー達は、自分が乗っている電車が川崎製だと知っているだろうか? 恐らくノーだろう。よしんば知っていたとしても、自分の乗っている電車が川崎製であることにブランドバリューや誇りを感じているだろうか? それもまたノーだろう。なぜならば、地下鉄はパブリック(公共)のものであり、自分が所有しているものではないからである。
 次に、ニューヨークのダウンタウンに行って、ZX-12Rに乗るタトゥーを入れた黒人さんに、「あたなの乗っているオートバイのブランドは何か?」と聞けば、こう答えるだろう。「Kawasaki」と。

 国内に目を向けても、なんと言っても『カワサキ・バイク・マガジン』などという雑誌が存在するぐらい、カワサキ乗りは“カワサキ”の名前に対して強い関心を持っているのである。もし私がここで「カワサキは社名変更すべきだ」などと書けば、あまりありがたくないメールをカワ車乗りから頂きそうである。私は彼らとはトラブルを起こしたくはない。(笑)
 しかし、ラインエクステンションは即刻やめるべきだということは強く助言したい。
 私がカワサキと聞いて思い浮かべるのは、まずはとにもかくにも、並列4気筒車である。
 特にZX-12R(フラッグシップ)、ZX-10R、ZX-6RR(レーサーレプリカ)、ZRX1200R(水冷のネイキッド)、ゼファー1100(空冷のネイキッド)は、ブランドバリューを確立できるドル箱と言っていいだろう。つまり、これらの並列4気筒車以外の車両は、即刻ラインから外して構わない。
 ここで日本人には関係ない、カワサキの海外戦略に文句をつけてみよう。
 カワサキは、その昔、非常に素晴らしいブランドバリューを確立した、素晴らしいネーミングのオートバイを売っていた。御存知“ニンジャ”である。しかし、カワサキはニンジャの成功に自惚れして、このネーミングが特に海外の人達にもウケたことに気をよくして、あらゆる車両にニンジャとネーミングしてしまった。結果、ニンジャの持つブランドバリューは下がってしまった。これはブランディングにおける初歩的なミスである。

 これに対する良いお手本は、スズキの刀と隼である。スズキは刀の成功は、刀だけにとどめた。私はロムシーで知り合った森谷さんのおかげで、多くの刀乗りの方と話したことがあるが、刀乗りの方達は、ハンス・ムートのデサインした刀に強烈なこだわりを持っている。これが“カタナ”という言葉が持つネーミングのパワーである。しかし、スズキはハンス・ムートのデザインしたカタナ以外には、カタナのネーミングは避けた。ちなみに、厳密には、海外で販売している一部の車種にカタナのネーミングは残されているが、強烈に失敗しているので、皮肉なことに誰も知らないことが幸いしている。話を戻して、仮に、もし隼を販売する時に、GSX1300R“刀”とネーミングしていたら、GSX1300Rは売れていただろうか? 恐らく、スズキ党の人間は、「あれは刀ではない、ニセモノだ」と思ったことだろう。つまり、スズキはいさぎよく刀の名前を捨てたことが幸いしたのである。結果、隼は海外で大成功を収めた。アメリカの黒人さん達は、とにかく隼が大好きである。

 では、ZX-12Rはどうすれば良いだろうか? そう、ニンジャに続き、隼に負けない新しいネーミングをつけるのである。黒人さん達が聞いて、エキゾチックな響きがするネーミングである。ZX-12Rのネーミングのままでは、性能がよくても、品質がよくても、消費者の心に響かないのだ。
 ちなみに蛇足だが、ホンダには見事に失敗しているブラックバードというオートバイがある。例えば、黒人さんはブラックバードに乗るだろうか? それは、日本人が“イエローモンキー”という名のオートバイに乗るようなものである。バカげている。

 さてさて、バカホンダはさておき、本題のスズキに移ろう。スズキはホンダと同じく、クルマとオートバイを作り、更にフルラインでやっている。つまり愚かだ。
 しかし、スズキが作るクルマの種類はそれほど多くはない。ほとんど全てが軽自動車である。これがスズキのフォーカスであり、スズキは軽自動車で大きなシェアを握っている。つまり素晴らしいラインの絞り込みだ。
 しかし、スズキの軽自動車、例えばアルトやワゴンRに乗る人達が、スズキが社名変更して、スズキと名乗らなくなることに、不快感を示すだろうか? 恐らく、もっとクールでイカした名前に変更すれば、全く問題ないだろう。
 従って、スズキはオートバイ部門をスピンオフした後、軽自動車を販売する会社を社名変更すべきである。そう、どこかに消えてしまったかのような印象のエッジ(携帯電話)を彷彿させる、そのままズバリの『エッジ』(元々ホームページ制作会社)が、成長して『ライブドア』に社名変更したように…。

 話を戻して、スズキもまた、スズキ製のオートバイに乗るライダーは、スズキというネーミングに対してこだわりが強いようだ。(以前私は、「スズキ」という文字のタトゥーを入れている黒人ライダーを見たことがある)
 従って、スズキもカワサキ同様、スズキのままオートバイを売っても良いと私は思うが、“バンバン”ラインを拡大するフルライン戦略は、即刻やめるべきである。

 私がスズキと聞いて思い浮かべるのは、まずはとにもかくにも、並列4気筒車である。そう、カワサキと同じだ。
 では、なぜスズキとカワサキの並列4気筒車は、大変よく売れ、しかも特に黒人さん達の間でブランドバリューを確立しているのだろうか?
 それは、シングル(単気筒車)とツイン(2気筒車)は、基本的にアングロサクソンの乗り物だからである。最近は、タイガー・ウッズがゴルファーとして成功した時期くらいから、黒人さんもハーレーに乗るようになったが、やはり黒人さんはキャデラック以外のアメ車や、シングルツインには乗りたがらないのである。そう、アングロサクソンはシングルツインに乗るが、カラード(有色人種)は、日本製の4気筒車に乗るのが暗黙の常識なのだ。
 つまり、スズキとカワサキは、ここにうまくつけ入っている素晴らしいブランドなのだ。ホンダやヤマハはいかにもアングロサクソンと仲がよさそうで、スマートすぎるのである。
 従って、スズキとカワサキは、並列4気筒車以外を作るべきではない。ドゥカティの二番煎じで作ったTLやSVなど、もってのほかである。(どうしても作りたいのなら、スピンオフしなさい)

 ふー、やっとスピンオフの教義が終わった。明日からは日記らしく、自分のことでも書くかな…。ちょっと“つかみ”が長すぎたようだ。(笑)




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