Erv's Letters index Text by Erv Yamaguchi


資本主義 2008年2月27日 17:10

 私は幼少期の頃、贅沢が大好きで、与えられたものでは納得いかないというようなワガママな性格の子供だった。しかし、この性格はどうやら大人になっても変化がないようで、私は常に現状に対する不満屋のようだ。
 そして、最近の私が他人から与えられたもので不満に思っているもの、そう、それが資本主義である。しかし、私がこれだけ不満に思っているというのに、様々な社会主義的な活動をされている方も、なぜか資本主義には無頓着な気がしていたので、なぜ多くの人は資本主義に対して好意的なのか、私は持ち前の好奇心を働かせると共に、今回はまず資本主義について考えてみることにした。

★封建社会
 資本主義とは、文字通り、資本がサイコー、資本がパーペキ、資本にハグ(抱擁の意)という主義である。
 では、人類が資本主義を採用する前は、どんな時代だったのだろうか? 人類が資本主義を採用する以前の時代には、封建社会があった。つまり、王様や坊さんがエラいという社会である。そして、封建社会の世の中には動かしがたいパーペキなヒエラルキーが存在していた。


  国王や貴族

    ↑

  坊さん(聖職者)

    ↑

   商人

    ↑

   職人

    ↑

   農奴


 こうしたヒエラルキーの中で、商人というのは、わずかな土地しか持たず、大部分の土地は王様が所有していたので、商人から下の部分に属す人達は、王様に沢山税金を支払うハメになり、戦争が起きれば兵隊としてこき使われた。

 しかし、時代が進むにつれて、商人や職人が増えて、「王様やクソ坊主に高い税金払うなんてまっぴらゴメンだ! 自由サイコー! 王様をブッ飛ばせ!」とヒステリックになっちゃった商人や職人が反撃に出た。そして、世の中にはこうした人達が集まった新たな階層、つまりブルジョアジーが誕生し、彼らは王様や坊さん達に抵抗する、ブルジョア革命を起こした。

 そしてブルジョア達は、もう土地などを独占する王様のいいなりはゴメンで、自分達にも私有財産が欲しいと訴え始め、こうした私有財産を認めさせる為に生まれたのが、資本主義である。つまり、資本主義とは、古臭い封建制度はイヤなので、自分の資本を認めさせろという主義である。

 そして、最初の内は革命は敗れたりもしたのだが、だんだんとこの運動が強くなるにつれ、ヒエラルキーの上部に位置する人達の中の一部の人達が、少しずつブルジョアジーに寝返ってきたことも手伝って、世の中はだんだんと封建社会から資本主義社会へと移行した。

★資本主義社会
 しかし、この世の中の変化は、あくまでもブルジョアジーから上の部分での出来事であり、一番下に属していた農奴(のちの労働者階級)にとっては、たしかに自由にはなったものの、自分達を働かせるリーダーが王様からブルジョアジーに変わっただけで、相変わらず奴隷のようにこき使われる現状は変わってはいなかった。つまり、封建社会から資本主義社会への移行とは、これまで王様が持っていた農奴をこき使う権利を、ブルジョアジーが自分達に渡せという変化でしかなく、ヒエラルキーは相変わらず存在していた。

 しかも、産業革命などの機械化文明の発達により、私有財産を持った資本家にしか機械が買えず、資本を持たない労働者達は、ますます資本家にこき使われるようにもなった。
 ちなみに、私が製造業、つまりは町工場で働いている時には、数千万円もする工作機械を動かし機械の部品を製造していたが、私自身には数千万円の工作機械を買える財力はなかったので、どれだけ理不尽な命令をされても、私は会社の社長、つまりは資本家に従うしかなかった。そして、町工場で働いている時には、私は文字通り機械の歯車のように働き、私自身は単に機械のボタンを押すだけの工作機械の始動装置に成り下がっていた。そして私は働きながら、自分が一生懸命働けば働く程、社長が肥え太るという様を目の当たりにして、資本主義とは、資本家がラクをするというシステムなのだと学んだ。

 しかし、以前にも記述したが、多くのサラリーマンは、ブログ等で会社のグチをこぼすが、社長に対して文句がある人も、資本主義に対しては文句を言わない。その理由は、一応タテマエでは、誰でも努力すれば私有財産を蓄えたり増やしたりすることが出来るからで、ようするに現時点で資本家になっていないのは、本人の努力が足りないからだという、市場原理主義がその人の脳裏に働いている為である。しかし、私の経験から言えば、資本家は資本を利用して労働者をこき使い、益々その資本が増強される他、資本には福利のマジックが働いて年月が増すにつれ増加していくので、労働者階級が資本家に追いつくことは、ほとんど不可能だと感じられた。

★共産主義
 しかし、大昔の封建社会に比べれば、少なくともブルジョアジーは労働者を自由に使える権利を得たので、大方の人達は満足していた。
 ところが、底辺層の労働者階級の人間性が踏みにじられている現状に対して、文句を言いだしたヒッピーがドイツにいた。カール・マルクスである。
 このオッサンは、定収入も定職も銀行の口座も持ったことがなく、医者に見せることが出来なかった為に3人の子供も失ってしまったという、強烈貧乏な人だった。
 彼が貧乏だったのは、資本主義社会が間違っているという理論を確立する為に考え事ばかりしていた為のようだが、マルクスは、労働者階級が人間的な扱いを受けられるようになるには、労働者が団結する必要があると唱え、それによって労働者階級が資本家からより多く分け前を奪えると考えた。

 このマルクスの考えは、ある種非常に魅力的だったので、マルクスが死んだ後にだんだん注目されるようになった。
 そして、マルクスの考えを盲信した人の中には、資本家から土地や財産を没収し、資本主義社会を社会主義社会に一気に変化させる為に革命が必要だと考えだした人も現れた。そして、実際に革命を起こしたのがロシアのレーニンだった。レーニンは、「卵を割らなければオムレツは作れない」と言った調子で、江戸っ子以上のレベルの気の短さで革命を起こしたようだが、しかし、マルクス自体は、成熟した資本主義社会の中で、成熟した市民がじょじょに共産主義を取り入れると考えていたので、こうした共産主義を標榜した革命家達は、成熟した資本主義をすっ飛ばして社会主義国を作った為に失敗したのではないかとの反論もあるようだ。

 また、現時点で失敗したとされる共産主義国の多くは、共産主義を利用して独裁政権をつくっている国が多い為失敗しているという意見もあるが、これが為、共産主義には悪いイメージが付きまとい、多くの人が“共産”という言葉そのものに強い嫌悪感とアレルギーを持ち、相対的に資本主義は素晴らしいものだと自己肯定しているように感じられる。

 そして、こうして世の中は資本の独裁が横行した訳だが、しかし多くの人達は、幼少期から従順さを重んじる教育がなされている為、就職した後、会社の支持には従う体制順応主義を抱き、経営者、つまりは資本家の言うことには素直に従うという受動的態度を受け入れている。つまり資本主義というイデオロギーは、人々の頭の中のすみずみにまで入り込んだ巧妙な価値観であり、そう言った意味では完璧なイデオロギーだと言える。

★ヒューマニズム
 しかし、世の中は広いので、完璧だと言われると欠点を探したくなる人物もいる。資本主義社会にはヒューマニズムが欠けていると考える人達である。

 資本主義社会とは、文字通り資本がある人最強システムなので、例えばガンにかかって病院に行き、手術をすれば助かるが、手術代は1000万円だと言われれば、1000万円を持った人が助かり、1000万円を持たない人は、そのまま死になさいという社会のことである。そして、こうした不平等感に対して疑問を持った主義が、社会主義である。

 そして、社会主義は様々な枝分かれをして、これまでも実行されてきた。しかし、共産主義、民族解放など、どれもあまり成果を上げられないどころか、多くは失敗に終わった。そして、こうした失敗は、社会主義は間違ったものだという認識を高め、資本主義こそパーフェクトという価値観を助長するだけだった。

 では、これまでの社会主義はなぜ失敗したのだろうか? これまで失敗した社会主義を観察すると、面白い共通点がある、それは、どれも権力を使えば社会が変わると信じた点である。
 そう、これまでの非ヒューマニズム的なヒエラルキーの社会では、権力がヒエラルキー間を分断してきた訳だが、面白いことに、社会主義を抱く人達も、権力を奪取することで自分達の理想が実現できると考えたが、実際に権力を手にするということは、再び人間関係の分断を行い始めることになり、別の問題が発生したというのが私の感想である。
 つまり、権力は、人間関係を分断する元凶であり、資本主義を標榜する政府なり国家なり資本家から権力を奪い、自分達が別の権力を使うのであれば、元のもくあみのようだ。
 つまり、社会主義の実現には、デモクラシー、そう、民主主義が絶対に必須であり、それが為、私は社会民主主義を支持することになった。

 子供の頃の私のイメージでは、社会主義の社会とは、“社会に縛られそうで不快”というイメージで、自由民主主義の自由とは、“好き勝手に何をやってもいいので楽しそう”というイメージだったが、大人になって分かったのは、社会主義の社会とは、“みんなとつながることが出来て安心”というもので、自由民主主義の自由とは、“好き勝手にやった結果他人とは分断される”というもので、こんなことも分からず40年間も無駄に人生を過ごしてきてしまった自身の無知っぷりに対して、我ながらあきれる始末だ。




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