Erv's Letters index Text by Erv Yamaguchi


バーチャル共産主義
2009年6月13日 22:57

第5戦イタリアGPの決勝結果とニュース配信サービス終了のお知らせ

 『サイクルサウンズ』誌廃刊に引き続き、「紙媒体じゃないから大丈夫だろ」と思っていた、ネット媒体の『MotoGP情報ニュースサイト インテリマーク』がサービス終了と、環境保護論者には嬉しいニュースが飛び込んできた。

 本来なら、motoGPを支えている、車両メーカーなりタイヤメーカーなりレーシングマシンに貼ってある広告スポンサーなりがこうしたサイトを支えても良さそうなものだが、『MotoGP情報ニュースサイト インテリマーク』は、バカ正直チックに一般のバナー広告の収入をあてにしたことで、motoGPに興味のある人間の少なさから撤退を与儀なくされたのだろう。

 という訳で、『サイクルサウンズ』誌もバカ正直にやってバカを見たが、こちらはそれとは少々意味合いが異なり、単に“インターネットは儲からない”という、分かりやすいケーススタディとなった。

 そう、これは、2000年頃にインターネットが産声を上げた頃にすでに出ていた結論だが、インターネット上では情報は金にならない。否、金にならないどころか、情報は発信者が負担するものであるということだ。

 つまり、それまでの情報ビジネスは、受益者が費用を負担するのが基本だったが、インターネットでは、通信料&接続料などを負担した発信者が費用を負担した上で情報を発信し、受信者はそれをタダで読むのが普通であり、例えばチヒロさんのように、ボランティア的に自分の利益に関係なく、金を払ってでも伝えたい情報があるというスタンスの人達が情報提供しているので、その同じ土俵で情報を売って利益を上げようというのは、ほとんど無謀と言える。

 つまり、「俺が与える情報が欲しいなら、まずは金を出せ」というスタンスの人間と、「お金を支払ってでも伝えたい情報がある」というスタンスの人間では、そのスタートラインのモティベーションが全く違うと言える。

 そう、すでに2000年辺りを境に、「金にはならないけれど、世の中に対して必要な労働があるんだ」という漠然とした思いからネットに参加し、情報をタダで発信するという人間の行動、つまり、金の為に働くという概念とは正反対の異質な労働に参加したいという欲求を創生したのがインターネットの世界であり、簡単に言えば、時代は変わった。

 そして、ここ10年のこの時代の変化を傍観すると、旧態依然とした紙媒体の人達の悪戦苦闘と、あるいは、その世界に住まう権力者達の横柄な無頓着さが嘲笑の対象となる。

 バイク乗りの世界においても、メーカーが用意したバイクに国際ライダーの肩書を持った人間が半日やそこら乗ったインプレなどよりも、もっと深く、1台のバイクを愛した素人ライダーの日記の方が人気を集める時代になった。つまり、苦労して得た国際ライセンスなど、文字通りタダの紙切れという訳だ。

 ようするにインターネットの世界では、国内2輪専門誌の権威と国際ライダーの持つ権力は分散し、ただのパンピーライダー達が実権を握るようになった訳だが、これを革命と呼ばず何と呼ぼう。

 インターネット上で自分のバイクライフを伝えている多くのバイクブロガー達は、ボランティア的に情報を発信しているとも言えるが、ボランティアと言うと、何か無償の労働という感がしないでもない。しかし、他のバイク乗りが傍観すれば、その行動様式は無償の労働というよりかは、“身銭を切った社会参加”という感じで、これまでの、情報を発信する者が儲け、受信者はあくまでも金を払う立場という時代は、正に競争化時代の象徴のようなスタイルだった訳だが、競争化社会の欺瞞性が見え隠れし、共生社会が垣間見えてきた昨今では、インターネットの普及と共に、情報は売り買いするものというよりも、共有するものという概念に変化しつつある。

 分かりやすく具体例を上げれば、私がネット上で誰かからタダで情報を得れば、感謝はするが金を払おうとは思わない。代わりに、自分も別の情報を提供しようと考える。つまり、“共に産む”社会、つまり共産主義がうまく機能している社会だと言える。(笑)

 多くの人は、資本主義や競争化社会を半ば仕方なく受け入れているが、本来は皆が幸せで、平和な社会を望んでいるのだと思う。

 リアルな世界では、それが実現するのはまだまだ程遠いと言えるが、バーチャルなネットの世界では、共生社会が実現しつつある。

 しかし、である。インターネットは、この地球上の上位20%の人達が利用する排他的クラブだとした場合には、インターネットはただのお金持ちのお遊戯なのかもしれないが、仮にお金持ちのお遊戯だとしても、そこに汗臭いリアルの世界のロジックを持ち込んで金を儲けようとすると、痛い目に合うというのが、『MotoGP情報ニュースサイト インテリマーク』が得た教訓だったのだろう。

 ご冥福を祈る。




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