Erv's Letters index Text by Erv Yamaguchi


過小評価される費用対効果 2004年12月13日 22:29

 ヤマハは…、
 ♪ロッシを雇ってチャンピオンを取ったってゆ〜じゃな〜い♪
 でも、YZF-R1は全然売れてませんから! 残念!
 マーケティングを無視した、おバカなヤマハ斬りっ!!

 さて、かつて本田宗一郎は、グランプリを“走る実験室”と形容した。今日では、motoGPはあきれたマーケティングの展覧会である。

 なぜヤマハは、motoGPマシンに対して、素直にYZF-R1という名前にしなかったのだろうか? 皆さんはYZF-M1の“M”という字の意味を知っているだろうか? 「無駄な努力」の“M”だろうか? 「まるでダメ」の“M”だろうか? 「みっともない」の“M”だろうか? もしかしたら、ヤマハで最も売れている、マジェスティの“M”かもしれない。では、その辺を走るマジェスティに乗る若者に声をかけて、今年のmotoGPのチャンピオンマシンは何だと聞いてみよう。恐らく若者は次のように答えることだろう。「motoGPって何?」
 ヤマハはマジェスティを売ることに何も貢献しないmotoGPの勝利にこだわり、10億円以上の金を1人のイタリア人に支払ったのである。ちなみにこれは、マジェスティの1645台分の金額である。ヤマハは1645台のマジェスティを無料で全国の都市部の若者に提供した方が、PR効果があったのではないだろうか?

 では今度は、その辺を走るカワ車乗りに、今年motoGPでカワサキに乗っていた日本人は誰かと聞いてみよう。もしかしたら、日本GPで3位に入った中野真矢選手について熱く語られ、そのまま飲みに誘われるかもしれない。

 表面上はヤマハの勝利だが、マーケティング上では明らかにカワサキの勝利である。しかし、多くの国内2輪専門誌は、ヤマハとロッシの勝利にしかスポットを当てていない。motoGPが果たすマーケティングの役割については無視を決め込んでいる。これでは、小学生が片手間に発行する『子供新聞』と大差はない。

 もちろん私はカワサキの回し者ではなく、袖無しGジャンも着ないし、KBM野郎(カワサキバイクマガジン熟読者)でもないし、明石市(カワサキ乗りの聖地)を巡礼したこともない。あくまでも売上とmotoGPの関係を客観視しているだけである。

 例えば、カワ車を買った最初のバイクがZX-10Rだったというユーザーはいるだろうか? 恐らく沢山いるだろう。これらのユーザーは、中野選手がカワサキに移籍したことに対して、どう思っただろうか? 「長年ヤマハに在籍していた中野が英断したのだから、カワサキには何かが起こっているに違いない」そう思ったことだろう。
 では、長年可愛がった中野を放出し、ロッシを迎え入れたヤマハはどうだろう? これまでロッシが好きだったというホンダ乗りが、YZF-R1に買い換えただろうか? 世の中は広いので、何人かはそうしたことだろう。しかし、多くの(元々ホンダ乗りの)ライダーは、そのまま幻滅してホンダ車に乗り続けたことだろう。なぜならば、何度も言うようだが、R1とM1では、名前、デザイン、色、爆発順序、バルブの数、マフラーの位置が違うのである。これでどうやってロッシの気分を味わえと言うのだろうか? YZF-R1を買ってロッシと同じ気分を味わえるのは、車輪が2つだという部分だけである。しかし、それならば他メーカーのオートバイでこと足りるのだ。全くキーボードを叩いている自分自身が情けなくなる始末だ。
 つまり、ヤマハが勝ったのは、ロッシとM1のおかげだと思いつつ、M1のレプリカが手に入らないのであれば、自分にはどうでもいいことだと多くのライダーは考えていることだろう。

 客観的に考えて頂きたい。ホンダは莫大な開発費と人員をmotoGPに注ぎ込み、勝つことは出来なかったが、CBR1000RRはそこそこ売ることが出来た。
 ヤマハは、莫大な開発費と人員をmotoGPに注ぎ込み、勝つことは出来たが、YZF-R1は全く売れない駄作に終わった。
 スズキは、motoGPにある程度は金を使ったが、勝つことは出来ず、GSX-R1000の売上もライバル車の出現で激減した。
 カワサキは大した金も人員も使わず、勝つことは出来なかったが、ZX-10Rは沢山売れた。

 従って、私が考えるmotoGPの各メーカーのマーケティングに対する評価は下記の通りとなる。

売上 経費 評価
カワサキ エクセレント
ホンダ
スズキ 不可
ヤマハ 大バカ者!!





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