Erv's Letters index Text by Erv Yamaguchi


自滅への道 2004年12月27日 02:31

 ホンダの生み出した5気筒エンジンと、ユニットプロリンクの優位性におけるオッズに変化が起きそうだ。

 5気筒エンジンは、主に車両重量の気筒数による区分による優位性が主な理由だと私には思えたが、(4気筒と5気筒は同じ最低重量だったので、より多気筒の5気筒車が優位であったと言える)これには多分に政治がからんでいると思ったマニアも多かったことだろう。

 しかし、実際にホンダがV型の5気筒エンジンを作った際には、エンジニアが言うように、確かに真上から見た場合に線対称であるし、ライダーがニーグリップする部分が2気筒で細くなるので、オートバイの車体に乗せるエンジンとして優れていると感じられもした。
 しかし、ヤマハが勝ってからは、突然専門家はヤマハのマシンに肩入れし出したようで、並列4気筒においても、例えば(実際はどうか知らないが)左右が線対称で同時に爆発するのであれば、ある意味線対象であるし、フロント寄りの重量配分になることから、V型エンジン搭載車よりも、スイングアームの長さを長くできるなどのメリットがあると、手の平を返すように報じるようになった。
 しかし、実際に問題になるのは、来年からは5気筒と4気筒の間にも最低重量の区分という名の壁が出来ることと、燃料タンクの容量が減ることによる、気筒数が少なく車重が軽いオートバイの優位性の方が、5気筒車の優位性がゆらぐ大きな要素になるだろう。

 次行ってみよう。(藤原紀香風)
 ユニットプロリンクは、私のサイトにおけるコアな読者ならば記憶していると思われるが、私は最初っからこのシステムには懐疑的であり、恐らくプロアームと同じで、ある程度時間が経ってから、「一体あの宣伝は何だったのだろう?」と言った調子で、いともあっさりと昔のシステムに戻す可能性が高いシステムだと私には思えた。
 実際に漁師(阿部孝夫氏)も酷評しているようだが、坂田和人氏も『サイクルサウンズ』誌にて、250ccのRS250RWの試乗記にて、チャンピオンのペドロサは通常のプロリンクだったのに対し、青山選手はユニットプロリンクで成績が悪かったので、青山選手の不振はユニットプロリンクに原因があったかのようなニュアンスの記述をしていた。

 以前私が記述したように、ユニットプロリンクは、車体の設計の自由度が増すことに対する見返りとして、車体の姿勢変化はライダーがコントロールするハメになるので、デザイナーが楽をして、ライダーが苦労をするという、ライダーが苦労しない為にデザイナーが苦労するというこれまでの常識とは正反対な考えによるシステムだと言えるし、そもそも、スイングアームにリアショックがくっついていて、路面追従性が増すのだろうか?

 さて、ここまでの記述ならば、そこら辺のボンクラのライターでも書ける内容なので、アクビをしている読者も多いことだろう。
 では、ここからは、ホンダが行う革新的でバカげたアイデアを紹介することで、この企業のマーケティングの姿勢を考察してみよう。
 例えば、ホンダがGP500で4スト(NR)をあきらめた後は、3気筒のNS500で大活躍したが、市販車のMVX250Fのエンジンは、500と逆のレイアウトの、前2気筒後1気筒のレイアウトで、後方のピストンは、前の気筒とバランスさせる為に重く設計されていた。しかし、他でもないホンダ自身がMVXは失敗作だと認めてしまう。
 次に私が覚えているのは、かの有名なプロアームで、当時のRVFのカタログなどを見ると、プロアームは、まるで永遠不滅の最高のスイングアーム形式であるかのように謳(うた)われている。しかし、これもまた、左右のねじれ方に差異が生まれることや、チェーンの張りを調整する度に対地角が変化してしまうなどの理由で、いつのまにかお払い箱になった。
 次に思い出されるのは、ピポットレスフレームで、このフレームが登場した時には、リア周りのねじれなどが、フロント周りに影響しないので、素晴らしいシステムだとホンダはさかんに宣伝していたが、こちらもまたいつのまにか消えてしまった。
 もっと目立たない例では、カダローラがNSR250に乗っていた頃、ホンダはラジエーターへの風量が増す効果があるということで、フロントフェンダーを外していたことがあったが、一時、多くのライダーもこれをパクったものの、現在では誰もマネしていない。(ホンダがやめたからだ)
 そして、ホンダは、カウルに無数の穴をあけると、左右の切り返しが軽くなることを風洞実験で確認したと言って、実際に穴をボコボコ開け、こちらはCBR900RRの初期型などの市販車にもフィールドバックされたが、いつのまにか穴はどこかへ行ってしまった。

 振り返ってみると、本当にホンダは新しいもの好きだということが分かるが、この新しいものをネタに、市販車の宣伝のツールとするのも得意であることが分かる。(ネタ自体は、悪気のないエンジニアが無料で提供してくれる)
 そしてまた、新しいシステムを発表することは、メディアの注目を集めることから、実際の売上の向上にも役立つことを狡猾に計算しているフシもうかがえる。
 そう、現在世の中では、広告は全く効果がないことの事実がじょじょに浸透しつつあるが、広告のかわりに最も効果があるのがPR(パブリック・リレーションズ)だという事実を、ホンダはかなり以前から気付いていたのだろう。

 つまり消費者は、現在では、広告を全く信用しないどころか、むしろ胡散臭いものと捉えている。これが広告における“逆説性”である。
 分かりやすく言えば、レストランにて、「当レストランは、美味しい料理を提供します」という札を掲げておくと、通りすがりの人は、「はて? 食中毒でも出したのかな?」と思い、「大バーゲン! 半額セール中!」と宣伝すれば、「どうせいつも高い値段をふっかけているんだろう」と思ったりする心理のことである。
 例えば、三菱自動車がリコール隠しという不祥事を起こした際、三菱自動車は次のように語った。「(三菱自動車は)隠し事をしない自動車メーカーになります」。あなたは信じるだろうか? 多くの人は、何を言おうが信じないだろう。つまりこの宣伝は逆効果である。

 しかし、PRは違う。PRとは、第三者に語らせることである。例えば、私がロムシーを主催するに当たって、私自身がロムシーの宣伝をしても、多くの人にはピンとこない。しかし、実際に参加した参加者の方達がクチコミで他のライダーに語りかけると、ロムシーへの関心は喚起されるのである。
 しかし、PRには欠点がある。それは、PRは自分自身でコントロールできないことだ。つまり、第三者が、一体、“いつ”“どれくらい”PRしてくれるかは、当事者には分からないのである。
 更に言えば、最近では『ライディングスポーツ』誌に代表されるタイアップ記事においても、PR効果は薄れてきているので、(タイアップ記事の隣のページに広告が掲載されていれば、相当なアホでない限り胡散臭いと思うだろう)タイアップ記事ではない、“本当の”記事でなければPRの効果が薄い訳だ。

 しかし、新しいシステムほど、何もしなくてもメディアが食いついてくるネタはないということを、ホンダのマーケティング担当者は利用したのだろう。
 つまり、システム自体の是非や本当に優れているかなどの要素は、実はどうでもいいのである。プロアーム、穴だらけのカウル、ピポットレスフレーム、ユニットプロリンク、V3、V4、V5、とにかくPRの為には、新しいネタが必要だという訳だ。

 しかし、これまでに私が記述してきたように、これらは全てラインエクステンションにつながり、結果的にコストを増大させ、ブランドバリューをも下げてしまう。つまり、短期的には効くマーケティングだが、長期的には自滅へ突き進むこととなる。

 さてさて、毎度毎度、消費者の立場ではなく、投資家の立場からのメーカーの見方を記述しているが、そろそろ株の買い方も分かってきたかい?

 様々な方から頂くメールを拝見すると、以前までの私は、ドゥカティなどの外車は嫌っている人間だと思われているようだったが、最近の私の記述だと、外国メーカーを褒めちぎり、国内メーカーをこきおろしているので、これはこれで、マニアックな私の文章の読者は、アンビバレント(両面価値的)な考えが特徴な私の文章におけるダブルスタンダード(二重基準)なんだろうと思っていることだろう。
 それはそれで正しいのだが、ようは、自分が豊かになる為には、素晴らしい企業の株を買い、愚かな企業の製品を買うことが賢明なのである。

 例えば、もしあなたが電気製品を買うのであれば、ヤマダ電機とコジマ電気が道路をはさんで向かい合っているような場所に行き、どちらか安い方で買ったほうが良いだろう。なんと言っても、彼らはお互いに競争しあって価格を下げてくれるのだから。
 しかし、もしあなたがそのカテゴリーを1つの企業が独占しているという商品を買うハメになった場合には、その企業の高価格に対して怒りを感じることだろう。しかし、その場合には、その企業の株を買えばいいのである。つまり、価格決定力の強い企業の儲けは、すなわち株主の儲けであり、しぶしぶ高い金を支払う客がいることは、自分の儲けにつながるのである。逆説的に言えば、コジマ電気とヤマダ電機が争うことで、どんどんと製品の価格が下がることは、その企業の株主からお金をかすめとっているようなものである。(もし倒産すれば、株主責任となる)
 つまり、価格決定力が強い素晴らしい企業の株を買い、価格決定力の弱い企業の製品を買うことは、自分を豊かにするコツである。

 従って、価格決定力が強いハーレーやドゥカティは、製品を買うのではなく、株を買い、自分が乗るオートバイは、無駄に競争して安くて良いものを売るハメになっている国産車を買うことが賢明なのである。

 ちなみに、私は自分の持っている株の銘柄において、その企業の製品を買ったりサービスを利用したことはほとんどない。逆説的に言って、これが私が国産車派である理由であり、国産のオートバイは買っても、国内2輪メーカーの株は間違っても買わない理由でもある訳だ。

 えっ? 何々? そう、大人は汚いのだよ。(笑)

 えっ? 何々? すでにハーレーの株主で、レッドバロンでスズキ車を買っているって? 御見それいたしました! さすがの私も、コジマ電気には入れても、レッドバロンには恥ずかしくて入れません!(切腹)




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