Erv's Letters index Text by Erv Yamaguchi


ネーミング 2005年1月31日 08:57

 日記らしくいこう。昨日は、ロムシー参加者で、隼に乗る、熊谷さんと後藤田さんがホネスまで遊びにいらした。(ロムシーの元参加者の方は、お気軽に遊びにいらして頂きたい)
 久々にお2人に会い、私はホネスの立ち上げまでの経緯を話したが、人に話すことで、私自身がこれまでの経緯において、頭の整理となった。

 さて、私自身は、以前からホーネット600が欲しかったのだが、ホネスのオープンを決定する前に、友人に対して、ホーネットの専門店を始めることを告白したところ、全員が反対だった。(笑)
 しかし、ホネスのサイトを立ち上げてから、親愛なる読者から頂いたメールは、全て肯定的な意見になっていた。
 もちろん、友人は、私のことを思って、あえて苦言を呈すという側面もあるし、逆に、親愛なる読者は、私の新たな行いに対して、罵倒よりは激励するだろうことも考えられる。
 しかし、そうした側面はひとまず置いておいて、これまでの私の日記にからめた、ロジカルな私の分析を紹介すれば、それは“知覚”の問題だと思われる。

 多くの日本人の抱く、“ホーネット”の知覚から考えた場合、ホーネットの専門店など、成り立たないだろうというのが、大方の予想だろう。
 ホーネットというのは、どちらかというと保守的なイメージがあり、カスタムや、ましてやサーキット走行など、全くイメージできないからである。
 従って、私が言葉を使って、「ホーネットの専門店を始めたい」と言えば、私の友人は、自分の知覚に従順に、「それは無理だ」となる訳だ。しかし、ホネスのサイトを立ち上げ、私がヨーロッパのホーネットカスタムのノリや、レーサーを紹介すると、多くの人は、私が狙っている路線を始めて知覚できたようで、ここで初めて肯定的な意見が登場したと考えられる。
 そう、知覚というのは、恐ろしい影響力を持っている。

 実の所、私がホーネットを選んだのは、ホーネットの保守的で軟弱なイメージが、ホーネットの知覚のリポジショニング(位置づけの再構築)にとって有利だと思ったからである。
 日本人は、外国人に比べても、非常に知覚に従順な人種である。例えば、カワサキに似合うマフラーは、ツキギやカーカーだとあなたは思っているだろうし、スズキに似合うマフラーは、ヨシムラだと思っていることだろう。特に、カワサキとスズキ車に乗る硬派な走り屋ほど、オートバイを知覚に沿ってカスタムする傾向が強い。また、面白いことに、こうした国産車はセレクトせず、ドゥカティをセレクトした人達も、本当にキッチリとドゥカティに似合うイタリア製のアフターパーツで愛車のカスタムをまとめる。このことが分からないアフターパーツブランドは、ドゥカティの最近の売れ行きの良さに目をつけ、ドゥカティ用のアフターパーツを発売するが、売れているのは、ドゥカティの専門イメージを獲得することに成功したブランドだけである。そして、多くのドカ乗りは、ヨシムラのマフラーはつけず、テルミニョーニのマフラーを今もこれからも装着し続ける。
 こうしたカルチャーが根付いていると、すでに消費者の知覚に沿ったカスタムをしている老舗のカスタムショップが、1番力を持つこととなり、2番手3番手のショップは、独自性を打ち出すことはもはや不可能で、差別化に苦労し、二番煎じに甘んじることとなる。
 私は、そうした意味で、ドゥカティやカワサキやスズキ車をベースにするのがイヤだった。これらのメーカーは、消費者の中で知覚が決定的であり、すでにポジショニングされているからで、私ごときがリポジショニングできる車体にはならないからである。
 そう、私は誰からも無視されているオートバイが欲しかった。幸いなことに、株式投資を通じて、私は誰からも無視されている銘柄を探すのが好きだったので、比較的すぐにホーネット600に白羽の矢がたった。

 その流れはこうだ。まず、私はカウル付きのオートバイがイヤだった。理由。転倒した時に高くつくからである。
 次に、私はツインショックのオートバイがイヤだった。理由。『前のりティ』との相性が悪く、ルックスが嫌いだからである。
 結果、私はスポーツネイキッドが欲しかった。
 では、スポーツネイキッドの中で、代表的なオートバイは何だろうか? 元祖は、GSF1200だと思われる。しかし、このオートバイは、スズキという消費者の知覚があるので、すでにGSFをカスタムしているショップの二番煎じになってしまうだろう。また、新しい所では、カワサキのZ1000がある。私はかなりZ1000に食指が働いたが、またいでみた時に、「これならイケる」感があまり感じられなかった。非常に抽象的な話だが、私はまたいだ時に感じる、「これならイケる」感というものを何よりも最優先している。そう、これは、結婚相手は“肌が合うか合わないか”という判断の仕方と同じである。
 また、Z1000は、ネーミングが失敗したと私は考えている。まず、多くのカワサキ乗りは、Z1000は“Z”ではないと考えている。むしろ、昔ながらのカワ車乗りの感情を逆撫でしたと言ってもいいと思う。Z1000は、これまでのカワサキとは違う、別のものだとポジショニングすべきであった。つまり、全くオリジナルの名称をつけるべきだったと私は考えている。このネーミング問題は非常に重要な問題で、仮に私がショップの名前を考える場合においても、Z1000の専門店をイメージさせる名前を作ることができないのである。仮にZ1000の名前にからめた名前を店につけたとして、お客さんは、私の店に対して、Z1000なのか、昔のZなのか、知覚することに苦労してしまうだろう。
 その点、ホーネットという名前は、数字やアルファベットを使っていないことが、決定的に重要だった。
 特に、私は雑誌広告を出す気がサラサラないので、インターネットブランディングが決定的に重要であり、その際、“ドメイン”というものは、通常の店舗名の決定の数十倍も重要だと考えた。私はインターネットブランディングにおいて、成功した企業(それはYahoo!だったり、Amazonだったりした)と、失敗した企業(紹介しても無駄な位誰も知らないドメインであった)を調べ、その違いを考察した。
 例えば、私以外の人間が、ホーネット専門店を立ち上げようと思った場合、その方は、ホーネット何々、あるいは、何々ホーネットと名付けるだろう。しかし、これではドメイン名が長くなってしまう。ドメイン名は、最低でも5文字が限界だと私は考えていた。また、ROMCは、インターネットブランドとする為に、サイトを立ち上げてから、「ロムシー」と読ませることで回避したのだが、(以前は、「アール・オー・エム・シー」と読ませていた)何かの頭文字をとった名前はよくないということも分かった。

 ベスレヘム・スチールとVF
 ハーシー・フッズとAMP
 ダウ・ジョーンズとUSG
 マクサス・エナジーとEMC
 インターレイクとNCH

 上記は互いのライバル会社だが、あなたはどちらが記憶しやすいと思うだろうか? そう、口語的な発音が、ブランディングにおいては非常に重要である。
 そして、ブランド名は、一般名称であってはならないということも分かった。そう、成功しているブランド名は、固有名詞であることが多いのである。アコム、アイフル、プロミス、アイク、といったブランド名は、高い金利を忘れさせるほど素晴らしい名前である。(別に私が金貸しを始める訳ではない)文章を面白おかしくせず、もっとまとも言えば、ナイキ、シャネル、あるいはソニー、キャノンなども、素晴らしい名前である。
 成功しているブランドは、口語的に良い響きがし、ドメインにした場合でも簡潔である。
 私は、初めから車種は絞る予定だったが、候補に上がっている車種にからめた独自のドメインを考えるに当たって、アルファベットや数字を使った名前の車種は、この時点で全て消えた。理由。口語的な発音が不可能に近かったからである。
 では、ホーネットについて考えてみよう。私がホーネットでやりたかったことは、走る、曲がる、止まる、といった、基本に帰ることであった。つまり、ミエをはらず、純粋にスポーツライディングしたかったのである。また、私は初めから完成されていた、改造する部分も定番に沿うだけといった、スーパースポーツ車に乗ることもイヤだった。私はチマチマ少しずつ、自分の好みにあったオートバイを造っていきたかったのである。つまり、カスタムがやりたかった。私は、ホーネット、スポーツライディング、カスタムの文字から、固有名詞を作りたいと考えた。しかし、言葉自体に意味がないネオロジズム(新造語句)ではなく、ホーネットを連想させ歯切れのいい合成語にしたかった。しかも許されるドメインの限界は5文字という厳しい規制もかけた。生まれたのがHONESである。
 もちろん、「山口モータース」は、最もバカけだネーミングだが、ホネスだけでは、お客様に知覚させることは難しいと考えた。そう、何か“いん”を踏んだキャッチフレーズも必要だ。しかし、キャッチフレーズを広告屋に遊ばれるのはイヤだった。誰にでも理解できる、特別ひねりもなく、気取っていないフレーズが私は欲しかった。そう、気取っていないことは親近感を持ってもらう為にも非常に重要だ。そこで私は決めた。当店は、「ホーネットカスタムのホネスです」である。
 また、店名のロゴの視覚的イメージも非常に重要だと私は考えた。ドメインを決めるに当たって私が自ら課した制限文字数は、ロゴを制作するに当たっての黄金律、そう、2.25:1の比率に従わせる為に考えた数である。ちなみに、この2.25:1という比率は、人間が視覚的に認知しやすいのは、クルマのフロントウィンドウの比率辺りだという理論にのっとっている。仮に、『ホーネット・プロショップ』とか、『ウルティメイト・ホーネット』などの名前にすると、あまりにも横長になってしまい、お客様に知覚されずらいと私は考えた。

 『ホネス』。『アコム』位呼びやすい名前だろう。(笑)しかも、口語的にはホーネットとは別のものなのに、ロゴを視覚した場合は、見る者は必ずホーネットを連想するだろう。Z1000やGSF1200では、こうしたネーミングは不可能である。

 さて、もし、これを読む読者の中で、今後バイク屋を始めようという方がいれば、格安料金にて、店名に対してコンサルティングするので、よければ御連絡して頂きたいと思う。(笑)
 もちろん私は、あなたの周りに存在する業界関係者と違って、八方美人戦略はとらない。なぜならば、誰でも、自分に絶対の自信を持つ人間の意見を聞きたがっており、カメレオン人間など、実は信用されないことを知っているからである。広告代理店の言うことなど、“まゆつば”ではなく、ウソである。
 理由。広告代理店は、クライアントの名前の悪口など言わない。




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