Erv's Letters index Text by Erv Yamaguchi


ファッドよりトレンド 2005年2月20日 17:38

 「なんだこのガラクタは? こんなマイナー車に死に化粧を施すのがいいことだとでもいうのか?」

 私のホーネットを見て読者も思ったことだろう。このジレンマに対する答えは、私の一貫した文章だというのが私の訴えではあるものの、多くの人達は、あまりの認知的不協和に、つかみどころのないグレーゾーンを感じていることだろう。
 そんなことはクソ食らえだ。
 あなたは私にマーケットリサーチをしろとでも言うのだろうか?

 「あなたはどこのメーカーが好きですか?」
 「あなたはどんなオートバイが好きですか?」
 「あなたはどんなオートバイに乗りたいですか?」
 「今後どんなオートバイが流行ると思いますか?」

 私の知ったこっちゃない。
 しかし、メーカーや国内2輪専門誌は、マーケットリサーチのワナにハマる。理由。消費者の答を元に進むのが安全だという訳だ。しかし、戦車部隊は次のように語っている。「行きやすい道には地雷が埋まっている」と。もちろん、生きて帰ってきた戦車部隊のセリフだ。
 占い師の聖域を侵食しよう。今後、5年以内にスクーター関連誌は半減するだろう。理由。ビッグスクーター市場がレーサーレプリカの二の舞になるからである。
 メーカーはレーサーレプリカの衰退から何も学ばなかったようだ。彼らを突き動かしているものは、バブル時代の不動産屋のような、“今がチャンス熱”である。
 メーカーは自分が送り出した製品を、ファッド(一時的流行現象)にもトレンド(潮流)にもすることができる。そして国内の2輪メーカーは、トレンドよりもファッドを好む。
 もし、自社の製品がなんらかの偶然でヒットし、そのカテゴリーが急成長した場合は、その成長に“水を差す”ことでファッドを回避し、トレンドにすることができる。
 しかし、多くのメーカーは、水を差さずに、火に油を注ぐ。過去はレーサーレプリカ、現在はビッグスクーターである。
 レーサーレプリカは、当初、4サイクル400cc、そして2サイクル250ccで火がついた。そして4メーカーが出揃うと、メーカーは次に4サイクル250cc、2サイクル125cc、2サイクル400ccとラインを拡大した。パイはどんどん大きくなった。カテゴリーはユニクロのように急成長した。
 しかし、ユニクロの急成長は止まった。自分の成長に水を差さなかったからである。
 そして、レーサーレプリカの成長も止まった。現在、400cc、250cc、125ccと、当時の全てのレーサーレプリカは死滅している。

 歌手を見てみよう。
 息の長い歌手は、売れると出演を控える。売れた時に呼ばれるままにホイホイ何にでも出演した歌手は、短期間でいなくなる。自分の人気を自分で食いつぶしたのである。
 サザンオールスターズ、ユーミン、山下達郎、中島みゆき、こうした人達は、ヒット曲を出した後、しばらく静かにするが、忘れた頃に再びヒット曲を出してカムバックする。出演と販売するCDの枚数をコントロールすることで、一発歌手になる運命を回避しているのだ。
 メーカーはもし何かがヒットしたら、そのヒットに水を差した方が良い。するとファッドにならず、ヒット商品は息の長いトレンド商品となる。ラインの拡大をやめ、宣伝をやめ、メディアへの露出を減らすのである。そして、これらは他のメーカーに押し付けると良い。自分はヒットした商品を、黙って買いたい人にだけ淡々と供給するのである。そうすれば、販促費がかからず、売れている間は笑いが止まらない。そして、商品自体も息の長いモデルとなり、数年でカタログ落ちするということもなくなり、更に笑顔も長く持続することだろう。
 ビッグスクーターの儲けを長く維持させるコツは、ビッグスクーターの需要を完全には満足させないことである。火に油を注ぐのではなく、水を差すのである。
 しかし、初期の成功を長期的な失敗にするのが、国内2輪メーカーのお家芸である。
 ハーレー・ダビッドソンやドゥカティならば、そんなことはしない。何度も言うようだが、彼らは損して得とるからである。この場合の損とは、短期的な成功を捨てることであり、得とは、長期的な成功を獲得することである。

 しかし、かくて歴史は繰り返す。ヤマハがビッグスクーターのラインを拡大した時点で、私はビッグスクーターは終わったと予感した。バイク屋が今からこんなカテゴリーに手を出すのは、金目当てに結婚するようなものである。
 えっ? 何々? 金儲けなんだから、金目当ては当然だって? では言い直して、ビッグスクーターのカスタムなど、私にとってはダッチワイフとのセックスみたいなものである。気分が悪いだけではなく、恐らくプライドもキズつくことだろう。

 ガラクタに死に化粧。私にお似合いのカテゴリーである。




www.romc.jp www.maderv.com www.bugbro.com www.bugbromeet.com