Erv's Letters index | Text by Erv Yamaguchi |
加齢による心境の変化と無変化 2005年8月12日 17:12 若い頃の私は、まるでアキバ系のオタクのように、アフターパーツが大好きだった。 特に、世界GPで使われているようなレーシングパーツ、例えば、オーリンズのショックだとか、ブレンボのマスターやキャリパー、マルケジーニのホイールなどなどである。 実際に私は、こうしたパーツを自由な発想で組み込むことを楽しむ、シングルレースに参戦していたこともあった。 しかし、私が使用していたSRXという、ニッチもサッチもいかない、どうしょうもなくどうしょうもないオートバイは、ベースマシンがサーキットに適したつくりをしていないので、まともに走らせるだけで大変に苦労した。もちろん、この苦労は、ある意味、自分自身のセッティング能力の向上に役立ちもしたが、純粋にサーキット走行を楽しむに当たっては、それはあまりメリットではなかった。 また、そのことは、その後に乗ったレーサーレプリカ車による走行で明らかとなった。 それから私は、10年以上もオートバイに乗らずに過ごしたが、もちろん自分自身がプロのライダーや、アマチュアのトップライダーになることなど考えなくなり、自分が主催するレースの参加者に対するジェラシー(嫉妬心)から、最も純粋に再びサーキットを走りたいと欲するようになった。よく言われる、「老人は赤ん坊に帰る」という言葉のように…。 そして再びサーキットを走り出した私は、GSX-R400R、ホーネット600、GSX-R750と、3台のオートバイに乗ってみたが、3台ともSRXに比べれば、数千倍マシなオートバイだったものの、どれも下手に改造していた為、純粋にはサーキット走行を楽しめなかった。 という訳で、現在の私は、全くフルノーマルのスーパースポーツ車に乗りたいと強く欲している。 もう、色々とチマチマセッティングのことなどで頭を使いたくないのだ。そう、どちらかと言うと、オートバイに乗ることで、スポーツとして健全に体を動かしたいのである。 従って、最近の私は、アフターパーツに対しても興味がなくなってきている。 そんな中、8月号の『SUPERBIKEMAGAZINE』では、私の好きなアランというライターのZX-6Rのロングタームテストにて、アクラのフルエキを入れたら、全域でパワーダウンしたというレポートが面白かった。(全域パワーダウンのレポートなど、国内2輪専門誌が掲載するだろうか?) ちなみに、詳しい方なら分かると思うが、05のZX-6Rは、排気デパイスがついているし、ノーマルに合わせたインジェクションセッティングのままでは、そのままマフラー交換しても、やぶへびになることも多い訳だが、近頃のスーパースポーツ車は、最初っから充分なパワーを誇っているし、アフターマーケットのマフラーも、20年前の3倍くらいの“お値段”がするので、費用対効果は更に小さくなっているようだ。 つまり、私自身は、ST600に参戦する訳でもなく、箱根に行く途中のパーキングエリアで静かに愛車を自慢する訳でもなく、単に自分自身がスカッシュでもやるかのように、心地よく汗をかきたいと思っているだけなので、オートバイにはほとんど何も手間をかけないような、フルノーマルのスーパースポーツ車に乗りたいと心底思うようになった。 えっ? 何々? 別の理由もあるだろうって? あなた業者の方? そう、業者の方なら分かると思うが、実は、レーサーではなく、フルノーマルの市販車のほうが、業者間のオークションに流した際に高値がつくので、1〜2年落ちのノーマル車を毎年コロコロ買い換えたほうが、例え中古車であっても、比較的新しい技術の恩恵を常に味わうことが出来るという、副次的なメリットもあるのであった…。 えっ? 何々? 神宮外苑のゴルフの打ちっ放し場や、目黒テニススクールに通う中年オヤジと同レベルの話で面白くないって? こりゃまた失礼失礼。 では、血気盛んな若者に向けて追記しよう。 さて、両方のマユを吊り上げてサーキットに通う若者は、次の3つの目標の内のどれかを目指している。 すなわち、ワークスライダー、コースレコード、エゴの充足である。 ワークスライダーになる若者は、エラい人の目にとまる才能に恵まれている。次に、コースレコードを出す若者は、単にオートバイを速く走らせる才能があるだけである。そして3番目の目標を持った若者は、え〜とえ〜と、それは若き日の私である。 そしてそれは今も続く。ちゃんちゃん。 |
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