Erv's Letters index | Text by Erv Yamaguchi |
セールスで発揮してもらいたい意地 2005年11月27日 20:33 サーキットに通う人達に対して、ロードレースの現況について質問すると、私自身なるほどその通りだと思うが、「苦境にある」と答える人が多い。 そんな中、ロードレースの底辺層の拡大、及び、ロードレースの認知度の向上に関わる玄人筋の方達にとって注目に値するオートバイが発売された。NSF100である。 私は最初、このニュースを北米のホンダのHPで知ったが、北米では、このNSF100は、$4,999というお値段で発売されるようだった。1ドルを120円とすると、59万9,880円である。 NSF100を紹介している北米のHP かつてヘンリー・フォードは、「ミニが生み出す利益は、ミニでしかない」と語ったが、ホンダは、ミニに対してラージな価格設定をしていると私は思った。 そして、このNSF100は、国内でも販売されることになった。すると我が国での販売価格は39万9,000円と、北米に比べれば大幅にプライスダウンした設定となった。ホンダはミニバイクの渡航費に約20万円かけるメーカーのようだ。 NSF100発売のHRCからのニュースリリース ところで多くのサーキット野郎は、この39万9,000円という価格に対しては、微妙な反応を取っているようだ。私自身、この価格が高いのか安いのかが、“オツム”が弱いのでよく分からなかった。 仕方がないので、手元にある唯一の国内2輪専門誌である、『サイクルサウンズ』誌を開き、ニューモデルを紹介しているページを参考にすると、TZ125の新車が104万7,900円で、YZF-R6のホワイトモデルが84万円だった。NSF100はTZ125よりも64万8,900円安く、YZF-R6のホワイトモデルの約半額である。 比較の対象がよくないとあなたは言うだろう。私もそう思う。 では、市販車のページを見てみると、NSFのエンジンをベースにしていると思われるエイプ100が26万2,500円だった。NSF100は、エイプよりも13万6,500円高かった。 こうして考えると、27万8,250円のNSR Miniは、市販車としてNSR50の成功があった為に、製造ラインのコストが安い気がし、NSF100の販売価格は、エイプの製造ラインがまだ減価償却されていないかのような印象を受けてしまうのは、私だけではないだろう。 それとも、5,000円ポッキリの飲み代に吊られて入ったぼったくりバーで、39万4,000円の“お箸代”を請求されたかのように、NSF100はセンターアップマフラーだけが高コストだとでも言うのだろうか? 正直に告白すれば、こんなミニバイクが40万円というのは、相当にサーキット野郎をバカにした金額だと思う。 しかし、現在NSR50でミニバイクレースを楽しむ人達は、2サイクルから4サイクルに移行している世の中のトレンドに従い、渋々ホンダに対して4サイクル化のプレミアムを支払うのかもしれない。しかし、なけなしの小遣いでレース活動している者にとっては、本音では、「トレンドはフレンドではない」と思うことだろう。 しかし、私が感じるに、多くのサーキット野郎や、玄人筋の方達も、ホンダのこの価格設定に対して、あまり本音を語らないようだ。なぜならば、冒頭でも述べたように、ロードレースを取り巻く環境は、現在苦境にあり、メーカーが高価格を設定するのも、やむなしという気持ちが強いからなのかもしれない。 さて、未来を批判するのは容易なことではないので、ここで歴史に対する無心の探索を行なってみよう。 レーサーレプリカのミニバイク版のルーツは、実はNSR50ではなく、ヤマハが販売したYSR50である。このオートバイが世に出た時には、レーサーレプリカをそのまま小さくしたそのフォルムに対して、まさしくみんなが欲しがっているオートバイだと誰しも思ったものである。しかし、このYSR50は空冷で、その後発売された水冷のNSR50に駆逐されてしまう。また、NSR50は、パブリシティでも成功していた。たしか87年前後だったと思うが、NSR250が味の素テラレーシングとのタイアップで大々的に発売された時、NSR50は、当時のワークスライダー(たしか小林大選手だったと思う)が開発に携わったと宣伝され、一気にその存在を知らしめ、その後ヤマハが何もしなかったので、NSR50はミニバイクというカテゴリーでトップに登りつめた。ヤマハは、250ccのレプリカでも、ミニバイクでも、そのシェアをホンダに奪われた。2サイクルのイメージが強いヤマハが、4サイクルのイメージが強いホンダに、である。 現在に戻ろう。 いつの時代においても、価格を引き下げるのは、ライバルの役割である。幸いなことに、ヤマハは2007年にロッシがF-1に転向すれば、10億円の金が浮くだろう。どうだろう、この浮いたお金で、100ccの水冷DOHCのエンジンを開発し、20万円台くらいのミニバイクを作って、「トップカテゴリーでもミニバイクコースでも、4サイクルはヤマハ」のキャンペーンで、過去に味わった苦渋をホンダに味わせてみてはいかがだろうか? そう、リベンジ(復讐)である。 これが本当に実現すれば、誰もが、4サイクルエンジンを作れるのはホンダだけではないと思い、同時に安価にミニバイクレースを楽しめれば、ロードレースの底辺層の拡大、及び、ロードレースの認知度の向上にも役立つことだろう。25万円の4ストミニバイクレーサーは、約105万円のTZ125の4倍は売れるとは思わないかい? もちろん、私のアイデアに欠けているものは、ここのところ不足気味な、メーカーの勇気、だけである。 |
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