Erv's Letters index Text by Erv Yamaguchi


私の敵 2006年3月3日 15:53

 ニーチェいわく、本は、良い読者によってより良くなり、敵によってより明瞭になるそうである。
 そして、今から127年前にこのおっさんから発せられた助言は、私のサイトにも当てはまるようだ。
 つまり、私のサイトは、良い読者によってより良くなり、敵によってより明瞭になるのだろう。
 では私の敵とは一体誰だろうか? 私の敵とは、メーカーの無知である。誤解してもらいたくないのは、私の敵はメーカーではなく、メーカーの無知である。
 ある人は言う、「アーブ山口には敵が多い」と。私には敵が多いのだろうか? 敵は多いだろう。つまり、世の中には無知なメーカーが多いのだろう。

 ヨーロッパの人達がインディアンが住む土地をレイプした後、1776年に正式に国として認められたアメリカに対して、ホンダが、オイルが漏れやすく、クラッチがすぐに磨耗してしまうオートバイを送り込んだのは、その183年後の1959年である。そして、その27年後には、アメリカの高級車市場に『アキュラ』というブランドを展開した。(アメリカの自動車メーカーは、日本のメーカーに市場をレイプされたと思ったことだろう)
 この、カブが高級車になるまでの27年というタイムスパンは、最短距離と言ってもいいだろう。ホンダは成功したメーカーなのだろうか? ホンダは成功したメーカーだろう。では、成功したメーカーはどうなるのだろうか? 成功したメーカーは、傲慢になるだろう。では、傲慢になったメーカーはどうなるのだろうか? 傲慢なメーカーは、自分は何でも出来ると思いあがるだろう。では、自分は何でも出来ると思いあがったメーカーは、どうなるのだろうか? 自分は何でも出来ると思いあがったメーカーは、本当に何にでも鼻を突っ込むことだろう。
 ホンダは、健康食品というカテゴリーへの参入を決めた。

 マドンナは、新しい曲のプロモーション・ビデオで、47歳という年齢にも関わらず、レオタード姿で踊ってみせた。見事である。
 しかし、マドンナは、グラミー賞のオープニングパフォーマンスを披露した後、ヘルニアになった。
 過去の栄光を引きずって調子に乗ると、ホンダもその内に腰を痛めるだろう。

 我が国の自動車メーカーのトップは、トヨタである。2位はホンダである。しかし、3位のニッサンは、おフランスからやってきた切れ目の救世主により、怠惰的な会社を立て直し、ホンダの売上に肉迫している。
 ホンダの新しい社長は何をやっているのだろうか? トヨタが逃げ、ニッサンに追いつかれる様をただ座視しているのだろうか?
 トヨタは昨年、ついに国内でも高級車をレクサスブランドで販売し始めた。ホンダがアキュラを展開するのは、その2年後の予定である。
 ホンダは、アキュラよりも、現在好調な軽自動車のカテゴリーに注力すべく、全車種を売る“併売型”にディーラーを移行させ、ゼストという軽自動車の販売を始めた。
 ゼストがレクサスに追いつく為には、一体何台のゼストを売らなければならないのだろうか? そもそも、軽自動車にフォーカスしているダイハツやスズキに対抗できるのだろうか? ダイハツやスズキのディーラーに訪れる顧客は、軽自動車のみを欲しがっている。応対する販売員は、必然的に軽自動車の知識が豊富である。ホンダの販売店に訪れる顧客は、様々である。必然的に、応対する販売員は混乱する。
 なぜホンダは、高級車に経営資源を手中させないのだろうか? レクサスがメルセデスやBMWから顧客を奪った後に、自分達にもパイは残されているとたかをくくっているのだろうか? ホンダの社長は、目先以上の先が見えない、マイオゥピア(近視の医学用語)なのだろうか?
 ホンダが高級車に経営資源を集中させるべく、軽自動車やオートバイをスピンオフ(分社化)した場合、それは無慈悲な態度ではあっても、悪徳ではない。少なくとも、株主の利益にはなるだろう。

 ニッサンとホンダの売上は、“どんぐりの背比べ”となっているが、ニッサンの株主資本利益率は、23%である。ホンダの株主資本利益率は、16%である。売上が近くても、ニッサンは株主から集めたお金で、23%の利益を出すメーカーである。ホンダは株主から集めたお金で、16%の利益を出すメーカーである。
 ニッサンは自動車だけを作るメーカーだが、ホンダはオートバイや、金にならないロボットを作っているメーカーである。

 ユニクロは、トマトを売るのはやめて、洋服に集中し始めた。トマトを売っても意味がないと悟ったからだ。
 ソニーは、何にでも手を出して多悪化したバカげた元社長をお役御免にして、ソニープラザなどの小売関連をスピンオフすることを決め、本業に集中し始めた。小売に手を出しても意味がないと悟ったからだ。

 ホンダは、健康食品を売るよりかは、わき腹についた贅肉をそぎ落として、自分達が健康になったほうがいいだろう。





↑は、新しくホンダから販売されたゼスト。(ホンダ本社ビル前にて)




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