Erv's Letters index Text by Erv Yamaguchi


バイク乗りが読むべき本 2006年5月18日 16:02

 ある国内2輪専門誌が、「ヒザを擦ることなど一切忘れろ」と主張したかと思えば、別のある国内2輪専門誌は、「ヒザを擦ると人生観が変わる」と主張したりしている。
 こうした別々の、単に異なる意見というよりかは、ハッキリと矛盾した記事が横行するのは何故だろうか? それは、ライター(書き手)達が、記事がなんらかの意味で“決定版”だとライダー(読者)達に思わせる為に、自らの主張を誇張する為である。
 何度も言うようだが、私は国内2輪専門誌を非難するつもりはない。彼らは自らの使命に忠実なだけである。そして又、彼らは読者をつなぎとめる為に日々努力し、(かわいそうなことに)締切りにも追われている。しかし、幸いにして、隠者的思想家を気取ることが出来るインターネットの世界における我が哲学科は、時間的制約がないので、物事をより大きな文脈で捉えてみよう。

 国内2輪専門誌は、ライダー達の好奇心を煽ることを生業(なりわい)としている。彼らにとって重要なのは、「何部売れるか?」であり、その結果、「次号にも広告が入るか?」ということも重要である。
 つまりは、国内2輪専門誌のエディター(編集者)とは、発行部数を伸ばす為に雇われたプロフェッショナルであり、彼らは読者をつなぎとめることに全精力を傾ける。そして2輪業界における知的エリート達は、自分こそが読者をつなぎとめることが出来る人間だとふれこみ、国内2輪専門誌に記事を寄稿する。仮にもしバイク乗り全員が国内2輪専門誌を読むのをやめた場合、このエリート達は雑誌業界のヒエラルキーの中で、自分の地位を誇示する場所もなくなってしまうだろう。つまり彼らは、金にならないインターネットではなく、金になる国内2輪専門誌の方に自分の居場所を求めているのである。
 そして、彼らが情報を売ってメシを食う為には、読者が賢くなっては困る。従って、読者をいつまでもバカにしておく為に、大きな文脈でモノを語ることは絶対に避ける。むしろ、文脈を細かくちぎり、問題の全体像をつかませないことが重要である。否、決定的に重要である。仮にもし、読者が問題の全体像に気付いてしまったら、国内2輪専門誌に書かれた記事は、非常に些細なことだということが露呈されてしまうだろう。つまり、彼らの存在は、大きな文脈を断ち切ることで成り立つのである。
 そして、断片化された細切れの情報を得た読者は、以前にも増して混乱する、つまりはバカになる。「ヒザは擦るべきか? 擦らないべきか?」と言った調子だ。
 タバコのパッケージには、「健康の為、吸い過ぎに注意しましょう」という警告が書かれているが、出来れば国内2輪専門誌にも警告ラベルを貼ったほうがいいのかもしれない。「まじめに読むと、精神汚染を引き起こす恐れがあります」といった具合に。

 面白いことに、本当に重要な情報は、この文明社会において、今でも口コミによってエリート同士で伝えられている。逆説的に言えば、こうした情報を独占する集団がエリートである。従って、エリートが自らの地位を保つ為にも、その他のどうでもいい情報が雑誌に登場することになる。例えばヒザ問題等である。
 仮に、国内2輪専門誌を読むことでヒザを擦らずにとてつもなく速く走れるようになったライダーや、あるいは国内2輪専門誌を読むことで、ヒザが擦れるようになって人生観が変わったというライダーが居たとしよう。誤解してもらいたくないのは、私はこれらの人がバカだと言っている訳ではない。これらの人は、問題を高所から眺める能力が欠けているという、現代人が持つ欠点をたまたま所有していたというだけに過ぎない。

 えっ? 何々? じゃーどうすりゃいいんだって? よろしい、では社民党や共産党と違い、私は代替案を提示しよう。
 国内2輪専門誌の顧客である、だまされやすい大衆が、好奇心を捨て、コレクト・シンキング(正しい思考)にありつく為に必要なこと、それは“何もしない”ことである。国内2輪専門誌は放っておき、エディターやライターの好きにさせておくのである。ただあなたは、それを買わなければ良い。別に彼らを野放しにした所で、あるいは彼らが食うに困っても、世の中はそれ程大きく変わらないだろう。
 しかし、ライダー達にとって幸いなことに、私がこんな忠告をしなくても、事態は良い方向に改善されつつあるようだ。そう、それがインターネットの出現である。インターネットは、ライダー達の目を覚ます役割を担い。国内2輪専門誌の発行部数の低下に大きく貢献した。ライダー達は、国内2輪専門誌が作り上げるバーチャル・リアリティーに背を向け、双方向性が特徴であるインターネットを通じて、現実的なコミュニティを作り始めた。この相互扶助社会を前にして、情報料を受信者に負担させる国内2輪専門誌は、圧倒的に不利な立場に追い込まれた。先見の明があるフリーのライターなどは、すでに転職を始めている。
 かくして、国内2輪専門誌に広告費を支払うのは、おめでたいメーカーだけとなり、多くの小売業者は、高価だが効果のない雑誌広告から資金を引き上げ、安価で効果測定可能なインターネットの広告に切り替えつつある。

 えっ? 何々? それでも国内2輪専門誌を読むことがやめられず、パーペキにやめると禁断症状が出るって? よろしい、では効果的なダイエット法をお教えしよう。そう、その方法として、羽毛のように軽い内容の月刊の国内2輪専門誌を読む代わりに、もっと内容のある分厚い書物を読んだらどうだろうか? 例えば、尊敬すべき福田照男氏が著した、『チャンピオンライダー考現学』などである。そして、食間に時々だけ月刊の国内2輪専門誌をつまみ食いするのである。これだけでもあなたの顔色は格段に良くなることだろう。
 最後にもう1つ、もしあなたが本屋に行き、購入した国内2輪専門誌が先月号のものだったら、あなたは「失敗した!」と憤慨することだろう。しかし、本当にタメになる情報なのであれば、先月号でも充分なハズである。書籍にお金を支払うのであれば、時の試練に耐えうるものを選んで欲しいものだ。






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