Erv's Letters index Text by Erv Yamaguchi


色々な問題 2006年8月5日 16:26

 私の名前はアーブ山口。あなたの神である。
 私の名前はアーブ山口。メーカーの御用雑誌の悪夢である。

 で、姫ライダー問題はどうなったのかね? えっ? 何々? まだ解決していないって? では、目の前に立ちふさがるあらゆる種類の障害に対するイラ立ちと寛容の無さが特徴の私が助言するとすれば、もしあなたの目前に、「姫」と呼ばれる問題の女性ライダーが存在するのならば、“たった今から”、あなたは自分の周りを女性陣で固め、自分のことを「殿」と呼ばせることで、「姫」に真っ向から勝負を挑んではいかがかな?

 で、恋人や配偶者を「相方」と呼ぶライダー問題はどうなったのかね? えっ? 何々? まだ解決していないって? では、地域によるレイヤー・ケーキ(階層社会)をあおる訳ではないが、♪ラララ原宿以上♪♪ラララ青山未満♪(藤井フミヤ風)に住む方限定にて、恋人や配偶者のことを、「マイ・スイート・ハニー」と呼ぶカルチャーを醸成してはいかがかな?

 と、書くネタがないと、きたりんの日記からネタを拝借する習慣が醸成されてしまった感が否めないが、親愛なる読者より、ネタがなくてもいいから、何か書いてくれというリクエストがあった。
 しかし、である。大変嬉しいリクエストではあるものの、何かネタがなければ、『アーブの手紙』のエッセンスが失われるし、私自身のセレンディピティ(貴重なものを掘り出す目利きの才能)が生かされないので、いつものように何かを訴えてみるとしよう。

 さて、我が国の総理大臣は、靖国神社に参拝することで、中国から批判されている。そして、中国でビジネスを展開したい日本の企業は迷惑を被っている。しかし、日経新聞が靖国参拝をしなくなった理由が書かれた昭和天皇のメモを暴露したことで風向きが変わった。
 しかし、このことは、日本企業、つまりは経済界が、中国とのビジネスを良好にしたいが為に、日経新聞に書かせたものであり、日経新聞は経済界の“御用新聞”だという批判も同時に生まれた。本当だろうか? いや、単に日経新聞は真のジャーナリズムを発揮しただけかもしれないし、本当の所は、一般庶民の私には分からない。
 さて、我が国のオートバイメーカーは、オートバイが思うように売れないので、国内2輪専門誌に対して、ハイプ(買いかぶった空騒ぎ)を巻き起こせと働きかけ、真に受けた国内2輪専門誌は、ただのメーカーの“御用雑誌”に成り下がっているという。本当だろうか? 信憑性は高い。理由。広告収入が欲しいからである。
 しかし、マーケティングの世界においては、「こうこうこうだからこうなった」よりも、「こうこうこうにもかかわらず、こうなった」という事例が多いので、私自身はメーカーと国内2輪専門誌の蜜月関係の成果に懐疑的なのだが、このことを、歴史に対する無心の探索を行なうことで検証してみるとしよう。

 ところで、私がオートバイに興味を持ったのは16歳の時であり、当時は、スペ公とケニーの83年の争いでGPが盛り上がり、国内では、宮城光選手と山本浩生選手のノービスのバトルが盛り上がり、『バリバリ伝説』がバカ売れし、いわゆる空前のロードレースブームが生まれ、250ccや400ccのレーサーレプリカ車がヒット商品となった。
 その後、レーサーレプリカブームは下火になり、ケバケバしくハデな感じがしたバブルの時代も終焉を迎えた。
 では、次にヒットしたオートバイは何だったのだろうか? 次にヒットしたのは、空冷で2バルブのオッサン臭いルックスのゼファー400だった。最初、他のメーカー、あるいは販売したカワサキ自身も、ゼファー400のヒットに首を傾げた。「何でこんな遅いオートバイが売れたのだろう?」と。
 次にヒットしたのは、TW200だった。こちらは、モトショップ五郎さんが作ったカスタム車がキッカケで、いきなりブームに火がついた。
 次にヒットしたのは、マジェスティだった。こちらは、4輪車的なイージーなスタンスで2輪に接し、また、4輪のスポーツコンパクト的なカスタムにも火がつき、ブームとなった。
 レーサーレプリカ、ゼファー400、TW200、マジェスティ、どれをとっても、メーカーが出した広告や、国内2輪専門誌が作り上げたハイプによってヒットした訳ではない。広告、ハイプは全て“後追い”である。
 つまりは、ほとんどのヒット作は、メーカーや国内2輪専門誌の予想に反した形で誕生する訳だが、ヒット作の分娩に立ち会っているのは、いつでも消費者、つまりはライダー達であり、これをセレンディピタス・ハイジャックと呼ぶ。

 もう少し詳しく考察してみよう。ライダー達は、そのオートバイが持つ魅力や、あるいは使用方法、ペルソナ(個性)などを勝手に解釈し、そのオートバイが持つイメージに対して主導権を握ってしまう。こうなると、メーカーや国内2輪専門誌の出る幕はない。何か行動すると、むしろ“シラケ”につながるケースも多く、ヒット作はトレンドではなく、ファッド(一時的流行)になってしまう。

 では、レーサーレプリカ、ゼファー400、TW200、マジェスティと言った打ち上げ花火ではなく、息が長いヒット作を考察してみよう。Z、刀、ニンジャ、ハヤブサなどである。(ホンダとヤマハは、広告予算が余っていることが災っているようだ)
 息の長いヒット作が、いつまでも息が長く売れ続けるのは、ライダー達が、そのモデルが持つイメージの主導権を握っているからである。メーカーや国内2輪専門誌は、ネタを提供するだけで、自分達が主導権を握ってライダー達を操作することが出来ない。(皮肉なことに)メーカーに出来る最善の策は、“放っておく”ことだけである。

 こうした歴史的な事実があるにも関わらず、メーカーは自分達の力でヒット作を生み出したいという衝動を抑えることが出来ない。あるいは、最初っからあきらめて、「そこそこ売れれば良い」といった調子で、GSRなんかを売ったりする。他方、マーケティング部門は気合が入っているので、雑誌『レオン』などにタイアップ記事を出したりする。愚かだ。(本気で作ったB-KINGなら、『レオン』掲載の効果が高かっただろう)

 メーカーの人間は、突然多くの若者達が、レーサーレプリカ車に乗って大垂水峠に日参しだすことを予想出来なかった。
 メーカーの人間は、性能を無視したゼファー400に多くのニーズがあることを予想出来なかった。
 メーカーの人間は、TW200が美容師の通勤の道具になることを予想出来なかった。
 メーカーの人間は、ビッグスクーターが若者のファッションになることを予想出来なかった。(ウイングを取り付けることなど夢にも思わなかったことだろう)

 メーカーが行なうべきレッスンとは、ライダー達を放っておくことである。もっとオーバーに言えば、ライダー達のイタズラ心に寛大になることである。ライダー達の自由な発想を支持し、ライダー達を信用することである。メーカーがブームを醸成するのではなく、ライダー達にブームの主導権を握らせるのである。

 それでバイクが売れるのであれば、何か文句あるのかい?




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