Erv's Letters index | Text by Erv Yamaguchi |
デンマークに首ったけ(2) 2008年5月13日 11:01 | ||
これまでの人生で、私自身は大田区の町工場などで働き、様々なアルバイトをしてフリーターとしても過ごし、日本の労働者の底辺層を観察してきたが、私自身や私の友人知人なども、現在問題になっているワーキングプアに対して強い問題意識を抱くようになった。そして、その原因が、ミルトン・フリードマンの提唱したネオリベラリズム(新自由主義)にあることを突き止めた訳だが、逆説的には、ネオリベラリズム(新自由主義)とは反対の概念で、格差を是正するイデオロギーについても探究することになった。 そして、竹中平蔵に代表されるシカゴ・ボーイズは、金持ちが金持ちになれば、そのおこぼれが貧乏な人達にも巡ってくるという、トリクル・ダウン効果を提唱していた訳だが、実際にネオリベラリズム(新自由主義)を注入してみると、金持ちはこれまで以上に貧乏な人から搾取し、全員がより上位に上がって社会全体が底上げされるというロジックがウソだということが分かった。そして、本当は、格差を是正して、中流層を増やした方が、良好な経済活動が生まれて、泉のように下から湧き出るファウンテン効果が期待できることが分かってきた。 というのは、かなりきれいに語っているストーリーだが、もっと本質をハッキリと言えば、ネオリベラリズム(新自由主義)とは、それを注入する人達が、注入された国からほとんどの富を収奪する為の手法であり、最初っからその国を豊にすることなど考えておらず、収奪したら次の国に移るだけであり、ネオリベラリズム(新自由主義)とは、とにかく富を奪っていくだけというイナゴの原理だということがハッキリしつつある。 |
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★労働環境 我が国の最低賃金は、最高が東京都の739円で、最低は秋田県・沖縄県の618円である。 しかし、私が働いていた製造業で働く外国人労働者は、長時間労働を強要され、非常に劣悪な環境で働いていたので、実質的な賃金は時給300〜400円になっている例もあったようだ。そして、日本の最低賃金が安くなってしまい、ワーキングプアがそこから抜け出せない理由として、この外国人労働者の低賃金の存在が大きいようだ。つまり、雇用主は、安い賃金で働く外国人労働者がいるのだからと、日本人にも安い給料を要求する傾向が強くなり、日本人の労働者も、“背に腹”といった調子で、泣く泣くそれに従ってしまっているという現状がある。つまり、安い外国人労働者を受け入れると、賃金がダンピングされる傾向が強まり、全体として賃金が下がっていくと、国の税収が減り、失業保険や生活保護などの国の対策の負担が増すという悪循環にハマっている。 しかし、デンマークでは、雇用先や国籍に関係なく、同一の仕事であれば、同一賃金が厳格に守られている。これは、別の見方、というよりかは、市場原理主義者から見れば、個人の能力の違いに対して給料に差をつけず、同一賃金にするのは、能力のある人達のやる気をそぐという批判にもつながりやすい訳だが、働く人の立場に立てば、組合で高い給料を要求し、全体を高い給与水準にしておく方が有利というのが、デンマークの実情となっている。つまり、デンマークの労働組合は、自分達の賃金を高く保つ為にも、外国人にも同一賃金を支払うような政策を支持している訳で、これは自分達の賃金水準を守る防衛策になっている。 具体的に見てみよう。デンマークは、人件費を非常に高く設定している国で、最低賃金は2007年の時点で時給約2500円である。また。看護師の平均給与は月給約55万円で、この給与に不満な看護師は離職して派遣会社に登録する。そして、派遣会社から派遣される看護師は雇用期間が切れると失業する危険性がある為、月額で約20万円高額な給料となる。つまり、デンマークでは非正規雇用者を雇うと、企業側は不利に、労働者側は短期的には有利になる賃金政策になっている。 キヤノン、いや失礼、日本とは正反対の考え方だ。 そして、人件費が高いことで、意欲のある看護師が沢山集まり、良質な介護者支援や老人介護が行われ、結果的に多くの労働者が介護に手を取られず働くことで、国益にも貢献しているという好循環が生まれているようだ。 また、午前8時から午後4時までの勤務時間という労働者が残業した場合は、午後7時までの残業代は5割増しとなり、それ以降は10割増しとなるらしい。しかし、実際にはこの残業代の60%は税金として納める必要がある為、労働者はめったに残業しないし、企業側も5割や10割も多い給料を支払うのは損なので、デンマークでは、週の法定労働時間の37時間がしっかり守られているようだ。 そして、4月25日放送の『ワールドビジネスサテライト』で紹介されていたのだが、デンマークでは、仮に失業しても、非常に充実した失業対策が講じられているようで、番組で紹介されていた失業したという女性は、以前手取り33万円だった給料に対して、22万円の失業保険が支給されているようだった。そして、こうした失業保険は、最長で4年間受け取れるらしい。つまり、デンマークでは、“確実な職”よりも、“確実な収入”が優先される政策をとっており、安心して休職できることから、副次的なメリットとして、出生率も上昇しているようだ。 こうして、デンマークでは、年間に約30%もの人が転職し、手厚い保護の為、国民の40%の人は、なんらかの所得支援を受けているという。しかし、こんな福祉のバラまきをしていたら、国家が破産してしまうと思いきや、実際には、取得税が50%前後だったり、消費税が25%もある為、まともに働いている人のこうした高い税負担により、国家財政は黒字化されている。 では、この政策でまともに働いている人達から苦情は出ないのだろうか? と思う人もいるかもしれない、しかし、そうした苦情はほとんど出ないと言う。なぜならば、デンマークでは、幼少期から「受け取りたいなら与えなさい」という教えが徹底されているようで、みんなで助け合うという価値観を、国全体で共有しているからだと言う。つまり、競争よりも共生を国民全員が受け入れているのである。なんとも素晴らしい人達だ。 また、別の見方をすれば、デンマークの人達が、なぜこんなに高い税金を文句も言わず払えるのかと言えば、税金を自分達の生活の不安を無くす方向で使ってくれる政府に対する信頼があるからだとも言える。8兆円もの税金を投入した長銀を、たったの10億円で外資に売ってしまい、その外資が新生銀行として新たに上場させたら、上場益が1兆円に達して大儲けしたという、こんなデタラメな金の使い方をしている政治家に対して、日本人が政治不信を持つのは当たり前だが、正に我が国とは正反対の政策をとって成功しているのがデンマークと言える。 さて、皆さんは、失業するといきなり路頭に迷う可能性が高い国で、雇われている時だけはかろうじて生きていけるという国と、失業がそれ程苦痛でもなく、国からの手厚い保護と職業支援により、失業してもゆっくりと次の仕事につくことを生活に不安なく考えられる社会と、どちらがお好みだろうか? 私は若い頃には、完全実力主義の世の中でのしていきたいと威勢良く考えていたが、だんだん歳を取って、自分自身が労働力を提供して給料を稼ぐリアリティーが薄れ、与党の悪政に対して国民の多くが苦しめられているさまを見て、だんだんと、そして今年に入ってからは急激に、市場原理主義的な国よりも、デンマークのような福祉国家が理想と考えてるようになった訳だが、現在でも所得が伸びているという上位5%、あるいは上位20%の所得が下落していない所得層以外の、すでに所得が下落しているか、あるいは保険料や食料品の価格の上昇に伴い、実質貧しくなっている残りの80%の人達は、そろそろ真剣にこの問題について考えた方が身の為である。
↑は、コピーレフトのどっかのサイトからパクってきたものだが、わざと面白おかしく書いてあるので、半分はギャグだと捉えたとしても、我が国の状況をおおむね言い当てているとも言え、これだけコキ使われている人が多くては、国民が政治に関心を持つヒマもないと言える。 実際、私自身、30代までは毎日激務で働いていたので、政治について考える余裕などなく、投票にも行ったり行かなかったりしていた。 しかし、デンマークでは、国政選挙の投票率が80%を割ったことがなく、2007年の国会議員の選挙の投票率は86.6%だったという。また、この際の選挙におけるテレビの討論会の視聴率は、なんと74%で、デンマークの国民がいかに選挙に高い関心を持っているのかも分かる。また、こうした討論のテレビに対する関心の高さも、法定労働時間の37時間がしっかり守られているからだとも言えるが、逆説的には、プライベートタイムがほとんどない程酷使される我が国の労働者達は、政治に関心を持ちたくても持てないほどワーカホリック(仕事中毒)化しているとも言える。正に悪循環だ。 また、これを読む皆さんも、日本における政治家の立候補者の、選挙カーを利用した名前の連呼に嫌悪感を持ち、これに対してむかついているので選挙に行かないとか、その候補者には投票しないという人も多いと思うが、mixi内にも、選挙カーを批判するコミュまである始末だ。しかし、デンマークでは、こうした選挙カーによる宣伝活動は認められておらず、逆に候補者達は、インターネットでの選挙活動に力を入れているという。また、その為に、候補者と選挙民の間での金品や利益誘導によって票が売り買いされるということもないという。正に、デンマークは理想を現実化している素晴らしい国だと言える。 |
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