Erv's Letters index Text by Erv Yamaguchi


高回転vs高回転
2008年9月18日 18:05

'09R1は、不等間隔なビートを刻む。(チヒロさんのブログより)

 なるほど。チヒロさんのように、トルク主導で走るライダーは、09YZF-R1にとても乗りたくなるようだ。

 こうなると、ピーキー(高回転高出力な傾向)にあるエンジンや、トルク嫌悪なライディングスタイルを選好する私の記述は、まるでチヒロさんに対してケンカを売ってるかのような内容になってしまったようで、チヒロさんに対しては申し訳なく思ったので、09YZF-R1を弁護する記述もしたいところだが、残念ながら、チヒロさんのエントリにてリンクされていた動画を見ても、09YZF-R1の排気音が本当に汚いことを確認してしまったので、益々嫌悪感が増してしまった。(笑)

 という訳で、インテリジェンスの高いチヒロさんや、チヒロさんのブログや『アーブの手紙』の愛読者は、お互いがいがみ合っている訳ではなく、これは単にライディングスタイルに対する好みの違いだと大人の判断をしていることに期待し、私は私の考えを引き続き記述することにしよう。

 むしろ、読者の皆さんは、トルク主導について考察するブログと、ピーキー志向について考察するサイトの両方を同時に読み進め、知的素養を豊にすることで、読者の皆さんがバイクという乗り物の奥深さを感じ取ったならば、三宅島の弱者を切り捨ててまで億単位の血税を利用して業界を発展させようと考える、漂白された、骨抜きの、おとといきやがれ方式のMFJのやり方よりも、ライダーの健全性の向上が期待できることだろう。

★HNの由来
 誤解してもらいたくないのは、皆さんがトルク主導の走りをすることに対して、私は何の文句もない。むしろ、その方が賢明だとすら思うこともある。

 これを読む多くのライダーも、「高回転でスピニングして走っているレーサーは、見ている分には楽しいが、自分でやろうとは思わない。つかできねー」という人も多いだろう。

 ところで、私自身のインターネット上でのハンドルネームである“アーブ山口”とは、フレディー・スペンサーやエディー・ローソンなどのアメリカンと、ルカ・カダローラというヨーロピアンのチャンピオンを生んだ影の立役者である、アーブ金本氏というエンジニアの名前からクリパーしたのは、マニアックなロードレースファンなら一目瞭然だが、サーキットで若い人と話すと、「アーブさんって、何でアーブって言うんですか〜? 危ない人だからアーブって言うんですか〜www」などと聞かれることもあるが、もちろんメンドーなので、即答で「そうです」と答えるようにしている。話を戻して名前の由来だが、私が以前経営していたショップで作っていたレーシングチームにて、私は様々なライディングスタイルを持ったチーム員のマシンセッティングを通じて、ライディングスタイルが違うライダーに対して、個別のセッティングが出来るエンジニアを尊敬していた。そうした想いから、自らアーブを名乗るようになったのが私のHNの由来だが、言いたいこととしては、もちろん私はトルク主導のライダーのセッティングを担当することになれば、そのライダーにあわせたマシンセッティングを施すことだろう。むしろ、私が作ったチーム員も、全員がトルク主導のセッティングを好んでいた。(ただし私をのぞいて)

 従って、これを読む読者で、トルク主導のマシンセッティングを好む方は、どうぞ09YZF-R1を買って頂いて構わない。むしろお勧めすらする。しかし、世の中には、台形カーブを好まないライダーが存在するという事実も、知っておくだけなら損もないだろう。

★ケニー・ロバーツ・シニアの言葉
 私が台形トルクに対して懐疑的になった理由に、ケニー・ロバーツ・シニアが平忠彦選手と組んでスズカ8耐に参戦することになった時のエピソードがある。

 ヤマハは、1985年のスズカ8耐に勝つ為に、ケニーと平という夢のコンビを実現させたが、ヤマハはケニーを迎えるに当たって、耐久レースでラクして走れるようにと、スプリントのレーサーよりも、よりパワーバンドの広いマシンを用意した。通常の一般常識問題の解答では、パワーバンドが広いマシンは乗りやすいというのが教科書的な答えだからだ。

 しかし、ケニーはこのマシンをテストした後、ヤマハの技術者に対して、「オマエ達はバカか」と言ったらしい。(ソース不明、フィクションの可能性有り)つまり、クリップ付近でまだバンクしている際に、低中速の回転数で巨大なトルクが発生してしまうと、なかなかアクセルをあけることが出来ず、そのままズルズル立ち上がってマシンが垂直になった時に、アクセルが全開にもならず、最高出力も発揮していないと、前には進まない、イコール遅いという訳だ。つまりケニーが言いたかったことは、「オマエ達は、市販車のエンジンが、そのままもっと高回転まで回ってそこで高出力を発揮するエンジンを作ることだけだ。余計なことはするな」とのことだったらしい。(ソース不明、フィクションの可能性有り)

 ウソかホントか分からないエピソードだが、若い頃にこの話を耳にした私は、なるほどその通りと思い、ケニーがほんとにそんなことをヤマハの技術者に言ったのか言わなかったのか、その真実よりも、個人的に、マシンのバンク角と、エンジンのトルクカーブというのは、非常に密接な関係があるという事を学んだのが大きな収穫となった。

 例えば、ZRX1200とかXJR1300とかのビッグネイキッドは、マシンが垂直な状態のストップ&ゴーが多いストリートでは、“乗りやすいバイク”というのが定説になっている。メーカーも、そうしたシチュエーションを想定して車両を開発している。それに対して、レーサー直系のスーパースポーツ車は、低中速トルクが少なく、“乗りにくいバイク”というのが定説となっている。それは恐らくその通りなのだろう。
 しかし、低中速トルクが太いネイキッド車をサーキットに持ち込むと、乗りやすいバイクは、途端に乗りにくいバイクに変容する。理由は、先のケニーのエピソードにあったように、クリップからなかなかアクセルをあけることが出来ず、その部分でのアクセルコントロールが大変シビアだからだ。
 これに対してスーパースポーツ車は、クリップ付近であまりトルクが発生せず、そのままアクセルを開けていく感覚とマシンが立って行く感覚がシンクロしやすい。そして、結果的にマシンが垂直になった時には、アクセルは全開になって最高出力も発揮し、しっかり前に進む、つまり速いというストーリーが出来あがる。

 しかし、こうした夢のようなストーリーをブチ壊すほどパワーアップしているのが、motoGPマシンと最近のリッターSS車だ。

★時代の変貌
 30代後半になってよく行くようになったトミンモーターランドというミニサーキットでは、ミニサーキットに関わらず、やはり速いのはリッターSSだが、速いリッターSSの人達の立ち上がりを見ても、彼らは意図的に極端にマシンを早く垂直にしてからアクセルを全開にしているようだ。恐らく、そうしないと、寝ている時にはアクセルがあけられないからなのだろう。しかし、この寝ている時からアクセルを開けられるよう開発されたのがmotoGPマシンであり、それを市販車にフィードバックしたのが、09YZF-R1という訳だ。従って、マシンを極端に垂直にするまでアクセルをあけられないというジレンマを長い間味わっていたリッターSS車に乗るライダーは、私がいう“情緒的”な音問題など無視して、単純に速く走りたいと、09YZF-R1に多大なる期待を寄せることに対して、それはそれで大変良く理解できる。つまり、大昔のケニーが言ったように、トルクがあるとケツが出ちゃうという昔話から、現在は、トルクが出てもケツが出ない技術に話が移行している訳だ。

 従って、ここから先は私の出る幕はなく、速さを追及する人は、どうぞそのまま突き進んでくださいということで、プロのライダーを目指す必要のない、単に個人の志向と純粋な好みにより、ピーキーなマシンを操る、あるいは操ってる人達を拝む、そして、「やっぱバイクはインラインフォーの集合管、それっきゃねー!」信仰について語るとしよう。

★ワールドSS
 『スピニングへの愛』にて私は、motoGPに対する私の楽しみが、SBK(ワールド・スーパーバイク)だと語り、そこに汚い音のリアタイヤがグリップしてしまうYZF-R1をヤマハが投入することで、世も末と語った。
 しかし、すでに大昔からSBKは、ボーボーいってるだけのテンション下がりまくりのドカが大半を占めていたので、こうした記述は詭弁だったとお詫びしたい。やはり、多くのロードレースファンのテンションを高め、カン高いエキゾーストノートが大量にコーナーに飛び込んでくる姿を拝めるのは、SSだ。

SS ロサイル ハイライト ベストラップ

 これだよこれっ!!!(核爆) このカン高いエキゾーストノート! この台数! motoGPなんてクソだ! ついでにスーパーバイクもクソだ! やっぱバイクは♪フオーン♪とかいう音させてないとテンションあがんねーんだよ!!!! スーパーバイクとか見てドンクセー音で走るドカ見てドカとか買う奴は、ゼッテー中途半端な金持ちかバカげたイタリアかぶれの不思議君不思議さんにちげーねー! そんな元生徒会長みてーな奴じゃーなく、俺はボーイズレーサーチックなライダーが大好きなんだよ! チクショーメー! でもって、声が裏返っちゃう福田照男氏がいなくなった後の、テンション下がりまくりの日本人解説者の退屈な日本のテレビのmotoGPとか見てもチョーツマンネーけど、ベストラップの解説とか、何しゃべってっかさっぱり分かんねーけど、解説もテンション高くなきゃしょーがねーだろっ! そんでもって、YZF-R6のゴールは、YZF-R6乗ってるライダーなら涙ちょちょ切れもの間違いなしだっ!

SS フィリップアイランド ハイライト ベストラップ

 地元でアンドリュー・ピット超喜び!

SS バレンシア ハイライト ベストラップ

 ストーナーもそうだけど、オージーは彼女が美人だ!(笑) フジワーラ(笑)はZX-6Rで低迷。マッコイはトラに乗って低迷してるぞ!

SS アッセン ハイライト ベストラップ

 どうゆうゴールの仕方だよ! 超あちー! アッセンのゴールはパネェ!

SS モンツァ ハイライト ベストラップ

 その第1コーナーにその台数が突っ込むの無理だろっ!(笑) みんなキレ系で大好き!(爆)

SS ニュルブルクリンク ハイライト ベストラップ

 パワー競争はツマンネ。

SS ミサノ ハイライト

 ガンガン転びまくり!

SS ブルノ ハイライト ベストラップ

 テンケイトホンダが100分の2秒差のワンツー!

SS ドニントンパーク ハイライト ベストラップ

 ハイライトは解説がない分、インラインフォーの集合管の音が楽しめる! ベストラップでは、トップのジョシュ・ ブルックスのスピニングやウィリーが見れる!

 と、久々に熱く語ったが、↑はとりあえずてっとり早くSSの魅力をお伝えする為に、あえてハイライトとベストラップだけをご紹介したが、こちらのSBKのサイトの中のビデオの中のSSにて、レースの全編も見ることが出来る。インターネットのおかげで大変良い時代だ。

 こうした海外のレース事情を知ると、なぜ欧州で600の市販車の人気が高いのか、そうした中でも、なぜZX-6Rが全世界的に売れてないのかが良く分かる。特にカワサキは、日本人ライダーがZX-6Rを転がしてると言うのに、国内においてまったくそれをマーケティングに生かしていない。遅いから無駄だと思っているのだろうか? いやそんなことはなく、右へならえで、国内4メーカー全社がマーケティングに活用していないからだ。(国内のCBR600RRに乗るライダーの中で、ワールドSSではテンケイトホンダのアンドリュー・ピットが活躍していると、何人のライダーが認識しているのだろうか?)

 しかし、である。恐らく、これを読む読者も、↑のCBR600RRとYZF-R6のバトルを見ただげで、CBR600RRやYZF-R6が乗りたくなったという方も多いのではないかと思われるが、あなたが会計士や結構裕福な公務員とかではなく、なけなしの小遣いでバイクに乗っているというボーイズレーサーチックな志向のライダーならば、SSのワンフーになることで、胸のすくような高回転のサウンドが心地よい、600にこだわりを持つようになるかもしれない。

 ちなみに、私自身が、ミニサーキットでピヨピヨ走るに当たっても、ZX-9RとVTR1000Fに乗った際は、トルクで“ヌルヌルと”リアタイヤが滑るあの感触に耐えられず、このトルクをコントルールしてスライドさせるのは、せいぜいきたりんくらいなものだろうと、自分では無理だとあきらめてしまったが、トルク主導型のライディングを好む方達は、この“気分の悪いスライド”という概念自体が全くなく、つまりスライドは全く前提になく、トルクを利用したグリップに関心が高いのだと思われる。例えば、4輪で言えば、4輪駆動車がなぜ4輪駆動なのかと言えば、タイヤにトラクションを与えた方が、よりグリップ力が増すという論理だからなのだが、トルク主導型のマシンを好むライダーは、タイヤにトルクをかける、つまりトラクションがかかることで、グリップ力を増したり、あるいは旋回性を引き出したりするという考え方なのだろう。それが間違っている訳ではなく、それはそれで大変ロジカルなアプローチだと言える。

 しかし、スピニングやスライドを前提としている、あるいは単にそれを楽しんでいるというライダーであれば、ピーキーなエンジン特製のマシンの方が、乗っていてはるかに楽しいしテンションも上がる、そして、テンションが上がることで速く走れる。

 ちなみに、私自身は、若い頃は400でそうした走りを楽しんでいたが、最近乗っていた04ZX-6RRも、タイヤの使用時間が最大のグリップ力が発揮されなくなった2時間を過ぎたあたりから、400の時ほどではないが、少しスピニングが楽しめる瞬間があった。従って、グリップしないタイヤやサスセッティングや何やらで、安心してスライドコントロールが出来るマシンも、600ならば作れるのではないかと現在考えている。以前紹介したドイツ人の無名のライダーのように。

 そして、例の音問題だが、仮にスライドなんかさせずにグリップ走行でピヨピヨ走って他のライダーからインポ扱いされても、等爆のインラインフォーを高回転で回した時の音を聞いているだけでも、気分の良さは保証され、気分の良さこそが、バイクに乗る最大の目的だということを思い出させてくれる。




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