Erv's Letters index | Text by Erv Yamaguchi |
ハゲタカ |
2009年5月5日 17:45 |
昨日今日と、友人の強い勧めと、私自身の興味本位から、リアルタイムで見れなかったNHKのドラマの『ハゲタカ』の再放送を見ているが、頭の中がすっかりハゲタカの思考になっている時に、バイクパーツを販売する『デイトナ』の赤字転落のニュースが耳に入ってきた。 デイトナ第1四半期決算…赤字転落 国内卸事業や海外のOEM不振で ところで、自動車など、メインに販売しているものがある、ただの大企業であるバイクメーカーをのぞき、2輪業界というのは、吹けば飛んでしまうような小さな業界なので、最近伸びてきた買い取り屋をのぞき、キチンと“モノを売っている”会社で上場しているのは、唯一デイトナだけで、その為、アフターパーツ業界の儲けの指針を判断するのに、このデイトナの役割は大きかった。 例えば、商売というのは、実は見かけではよく分からず、帳簿を見ないと本当のことは分からないのだが、見かけ上ハデハデしくやっているところが、いきなり倒れるということもよくある。2輪業界で言えば、金持ち相手にヨロシクやっているように見えた、ドゥカティを売っていたモトプランさんが倒産したのが記憶に新しいが、見かけがきれいな外車屋が、実は内情は火の車で、見かけが汚い解体屋さんが、実は莫大なキャッシュを持っていたりなど、こうしたことはよくある話だ。 ちなみに、株式投資をしていれば、だんだんとこういったことに対する感性が磨かれてきて、立派なオフィス、大盤振る舞いの役員報酬、中途半端な業績は、同時にやってくることを予想することができる。 しかし、そうは言っても、上場している会社がほとんどない2輪関係の会社は、倒産するまで中身が分からないことも多いのだが、デイトナだけは上場しているので中身がよく分かり、2輪のアフターパーツ業界の動向の資料として有益だったのは、前述の通りである。 ★ハゲタカの不在 デイトナが赤字転落したということで、早速デイトナの通信簿を拝見すると、デイトナの時価総額は、現在15億4700万円だった。ちなみに、現在私は『ハゲタカ』を観た直後なので、もちろんすぐにデイトナの買収を考えてみた。(笑) シミュレーションしてみよう。ところで、以前私は、自分が株を買った会社が、直後に外資に買収されてしまったという経験がある。モノホンのハゲタカだ(笑)。その際、買収した外資は、直近の過去3ヶ月の平均株価に35%のプレミアムをつけて買収したので、私は労せずして数日間で35%の利益を上げた経験がある。一概には言えないが、この時の経験則から、既存の株主と穏便に交渉を進める為に、デイトナの現在の株価に35%のプレミアムをつけた、20億8845万円でデイトナを買収したとしよう。デイトナには30億9600万円の資産があるので、約10億円の金が入り、そこからデイトナが持つ借金の8億4800万円を返済すると、約1億6000万円が手元に残る。21億の買い物で1億6000万円の儲けだと7.7%の利益か〜。ハゲタカも動かないかな?(笑) いかんせんドラマを観た直後なので、これを読んでデイトナやライコランドで働く社員の方達は気分を悪くしてもらいたくないが、仮にデイトナの現鈴木社長が上記のエピソードを聞いたら、「ぶさけるな!」と、両手で机を叩き立ち上がることだろう。 しかし、その鈴木社長は、2011年には売上110億円を達成したいとHP上で息まいている。2007年の売上が77億円で、2008年の売上が70億円と7億円減少し、2009年の第1四半期が赤字転落しているにも関わらず、である。(第1四半期の売上を単純に4倍すると、今年の売上は約56億円で目標の半分程度) 果たして、この不景気と2輪業界における逆風のさなかで、2年後に08年の57%増の売上の上昇を見込むこの社長を、あなたは信用できるだろうか? えっ? 何々? オマエはどう思うのかって? 同じ2輪業界で働く私のクチから言うのはコクと言うものだよ。(笑) しかし、デイトナを弁護すれば、社長の言葉を信用すると(笑)、昨年は、ライコランドにおいて、基本に立ち返り「お客様に支持され続ける店作り」に集中し、利益の創出と財務体質の改善を進めたとのことで、この部門の黒字は増えたという。もちろん、2輪業界において恐怖の第1四半期(つまり冬)に赤字転落したというのは、その努力もむなしかったことを物語ってもいる訳だが、最近の傾向である、通勤原付2種と、中高年ツーリング大型2輪用品の堅調を、どこまで伸ばせるかというのが今後も課題となるのだろう。 ★昔話 話変わって、実は私がまだ23〜24歳の頃に、当時のデイトナの社長の息子さんに誘われて、私は居酒屋でこの息子さんと飲んだことがある。その際、この息子さんは、「この業界って、ビルを建てたり、ベンツに乗れば成功だと思ってる人が多いじゃないですか〜。でも、ボクはそれは違うと思うんですよ〜」と語っていて、もしこの息子さんが、私を帝国ホテルかホテルオークラのバーに誘ったら、私は御馳走にだけなって、この息子をドラ息子と評価したと思うが、安っぽい居酒屋で飲んだので、私はこの息子さんに多少シンパシーを感じた。 そして、当時のデイトナの社長は、2輪業界の活性化の為に、千葉県に大きな用品店を出すとトップダウンで発表し、業界からも身内からも大反対の声が上がっているというのに、社長は全く聞く耳を持たないというような話を私はこの息子さんから伺ったが、その後出来たのが、皆さんご存じのライコランドだった。 しかし、その後は、このライコランドスタイルのナップスなどが台頭し、同時に細かくショップが乱立する上野のバイク街は廃れていった訳だが、ナップスなどのライバルの台頭に、ライコランドなどはどうなってるのかと思いきや、やはり現社長の元では、デイトナ全体は厳しい業績となっているようだ。 しかし、10年前であれば、赤字転落とは言っても、PBR(株価資産倍率)が1割れのこの企業は、ハゲタカにしてみれば美味しいというのに、リーマンショックを境に、ハゲタカなどどこかへ行ってしまったので、デイトナは赤字にも関わらず、現在のハゲタカ不在の状況に救われているとも言える。 ★消耗戦の時代 非常に細かいミクロの話だが、私が以前乗っていたZX-6RRには、バグアイヘッドライトを装着する為に、デイトナ製の倒立用のライトステーを使用していたが、現在は廃番になってしまったので、私は仕方なく、海外から安っぽい倒立用のライトステーを輸入して細々と販売しているが、倒立用の安っぽいライトステーが現実に手に入らなくなってしまったので、ストリートファイター系に関わらず、私から倒立用のライトステーを買う人が多く、私は超ニッチに滑り込んでいると言える。 また、正直デイトナ製品で、これと言って魅力的なパーツはあまりなく、それでいて廃番も増えるとなると、店頭売りのライコランドのビジネスに注力することになるのかもしれないが、ライバルでナップスとかラフローの存在など、色々と激戦区なだけに、売上を伸ばすというよりかは、むしろリストラが優先されることだろう。実際、私が言うまでもなく、デイトナは店舗や自社用バイクを売却したりすることで、借金も大幅に減少しているので、財務は健全化しているようだが、私はこれまで、5年くらい前に1回だけしかライコランドに行ったことがないので、ライバル店との比較は、これを読む皆さんの方が詳しいと思う。 ただ、誰でも予想できることとして、ライバルと競争すれば、単純に値引きやセールなどにより消耗戦となることが明らかなので、今後用品店は、どこかが倒れるか、あるいは共倒れの可能性もなくはない。 ★再生案 四半世紀も前の空前のバイクブームの頃は、八百屋のような掛け声をかける下品で小さなショップが乱立する上野のバイク街が大盛況だったが、現在は、バイク用品と言ったら、郊外にあるライコランドやナップスのような大規模店舗で買うのが主流となってきた。 しかし、そこに今度は、ネット通販というあらてのライバルも現れて、既存の大型店舗は、クリック&モルタル(通販と実店舗)で攻めてもみたが、教科書通り、クリック&モルタルは通販専業の業者には太刀打ちできない。 従って、実店舗が成功するケーススタディは、あらゆる自動車メーカーが販売台数を減らす中、唯一販売台数を増やしたアウディが行った、社員教育の充実によるアフターの向上しかないように思えるが、サービス残業サービス早出&昼メシ抜きなどで人の入れ替わりが激しい『蟹工船』を地で行く2輪業界の代表的な悪例である用品店が、果たしてアウディの正攻法をすぐに取り入れられるかどうか、正直それもなかなか考えにくい。(笑) まーぶっちゃけ、この不景気と2輪への逆風では、八方塞がりでなかなか改善は見い出せないが、ハゲタカが買収した場合、上記のようにいきなり資産を売却とかの単純発想ではなく、企業をキチンと再生させて儲けるという場合、どんな再生プランで考えるのか知りたいと思いつつ、明日のハゲタカの最終回を楽しみにするとしよう。オチなしメンゴ。 ハゲタカ |
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