Erv's Letters index | Text by Erv Yamaguchi |
ファッドに終わったビクスク |
2009年5月6日 16:27 |
今から4年も前に、私はこちらにて、ビクスク市場は、供給を絞れば、ファッド(一時的流行現象)ではなく、トレンド(潮流)にすることが出来るが、ヤマハがラインを拡大したことで、ビクスクのマーケットは終わると予想していたが、本当にビクスクの流行は終わりを迎えた。 現在、ビクスクを買い取り屋に出すと、査定額がゼロ円ということもザラで、ほとんど値段がつかないと言う。また、業者オークションにおいても、タマが多い割に売れないので、やはり価格がつかないと言う。 時代は繰り返すと言うが、国内メーカーのやることは、本当にいつもワンパターンだ。 ★4スト250 最近割とヒットしたバイクと言えば、Ninja250Rがあるが、業界の優等生的な評価では、長い間中型のカウル付き車のリリースがなかったので、Ninja250Rはスマッシュヒットになったと言われている。 それならそれでいいのだが、この隣の芝生を見て、これまたいつものパターンでホンダがVTR250を出してきた。この状況を見て、レーサーレプリカブームが去った後で、こんな遅いバイクは誰も買わないと思ったゼファー400が、“スマッシュヒット”になったにも関わらず、このカテゴリーにおいて、最後の勝者になったのがCB400SFとなったストーリーを思い浮かべる人も多いだろう。 そう、ホンダというメーカーは、TZR250がバカ売れすれば、その後NSR250Rで250のレーサーレプリカというカテゴリーを制し、YSR50というミニバイクのカテゴリーをヤマハが提案すれば、NSR50でこのカテゴリーを制し、マジェスティでビクスクというカテゴリーが生まれれば、フォルツァでこのカテゴリーを制すなど、ヒット作をパリティ(ありきたりな)商品におとしめることで、最終的には自分が勝つという戦略を持つメーカーで、今回の4スト250の対決においても、最終的にはVTR250が制すことだろう。 ああ分かってるよ、つまらない結果で申し訳ない。 ★マイクロソフトvsマック 国内4メーカーのシェア争いを見ていると、マイクロソフトvsマックの争いとどうしてもかぶってしまう。 そう、マックは独創的なアイデアに富むものの、バージョン2やバージョン3の開発に消極的だが、マイクロソフトは、最初のアイデアはパクリで、バージョン2やバージョン3の開発が得意だというイメージがあって、金儲け的にも、後だしジャンケン的なマイクロソフトとホンダが美味しい思いをしているイメージがある。否、事実美味しい思いをしている。 また、マックのエバンジェリスト(熱狂的信者)は、マイクロソフトをとにかく忌み嫌っているが、ヤマハ・スズキ・カワサキのエバンジェリストもまた、ホンダをとにかく忌み嫌っている所が非常に似ている。 しかし、何が何でもホンダが最終的に勝つ訳ではなく、もちろん例外もある。それがSRとV-MAXだが、SRに関しては、ホンダは何をやってもヤマハからパイを奪えなかった。しかし、SRは規制クリアの問題からかラインから外れてしまったが、V-MAXは今年ニューモデルを出したことで、X-4で追いつけなかったホンダの追従を今後は受け付けず、このカテゴリーで1人勝ちすることだろう。 また、メガスポーツというカテゴリーもホンダが苦手とする分野だが、ここもまた、GSX1300R隼vsZZR1400という、スズキとカワサキの男臭い争いに対して、女々しくスマートなイメージのホンダが加わることは難しいだろう。 また、今のところメーカーが本腰を入れず、メーカー系列の小さな会社が輸入しているに過ぎない、125のロードバイクのカテゴリーでは、エンデュランスさんがタイホンダからCBR125RやCBR150Rを販売されているが、今いちパッっとしないものの、ヤマハがメーカーを上げて本腰を入れれば、ルックスに優れたYZF-R125の方がトレンドを作りそうな気がする。しかし、ヤマハが本腰を入れて、そこそこ売れたのを確認した後、これまたいつものパターンで、ホンダが後出しジャンケンでシェアを奪い返すかもしれない。(なんてオヤジ入った夢のないストーリーだw) ★ビクスクのヒストリー ビクスクの話から脱線した感があるが、ヤマハがマジェスティでビクスクを若者のファッションの一部とした後、ホンダはフォルツァでビクスクをオヤジが乗るコモディティ(日用品)にしたことで、このカテゴリーには、特別バイクにこだわりがなく、バイクをただの便利な道具とする人達がドッと入ってきたが、駐車禁止が厳しくなることで、便利な道具は、“おかみ”にお布施を支払う為の集金マシーンに変貌したので、特別バイクに思い入れの無い人達はこの宗教から脱会し、裏口から逃げ出してしまったことで、このカテゴリーには、クルマのタイヤに交換し、テールにウイングを取り付けた、浜崎あゆみの曲を全開で流す若者以外、誰もいなくなってしまった。 予想はしていたが、本当に短い命だったね。 ★長期的展望に立てない国内メーカー ビクスクがブームになった時、業界関係者達は、これまでバイクに興味が無かった人達が、“オートマ”という利点に惹かれて、バイクという名の宗教に入信することは良いことだと語っていたが、今回、ビクスクを降りてしまった人達は、自分が乗っていたバイクに下取り価格がつかない現実を前に、バイクというのは、中古になると二束三文どころか、ただのゴミになるという経験を記憶に刷り込んでしまった。つまり、この人達が再びバイクを新車で買う可能性は非常に低く、業界関係者の天真爛漫な楽観論は、残念ながら杞憂に終わることだろう。 これも全て、4年前に私が語ったように、ブームが生まれた時に、供給を増やさず、供給をしぼっていれば問題が無かった訳だが、人間というのは、例え株主から金を預かる身分の大企業でさえ、“今がチャンス熱”には抗しがたい魅力を感じてしまうようだ。 ★狙わずとも成功する輸入車 国内メーカーと対照的なのが、輸入車だ。 輸入車は、好むと好まざるとに関わらず、作っているのが青い目なので、売れているからと言ってインポーターの声をすぐに取り入れて増産などあまりしない。従って、ヒットしていても、納車が数ヶ月待ちとなることも多い訳だが、これにより中古車市場での値崩れも起きにくく、相対的にブランドバリューのキープにも貢献し、長期的に見て、ファッドではなくトレンドにすることができる。 また、供給に対してニーズが上回った場合、増産するよりかは、むしろ値上げするという手法の方が好まれており、これもまた、更なるブランドバリューの向上と、下品な若者を遠ざけるという一石二鳥にもなっている。 国内メーカーは、たしかにヒット作が生まれれば、その時にキャッシュは増えるが、それを販売する末端の販売店は混乱し、ブームが去れば、後にはゴミが残るとなると、販売店は結局骨折り損となるが、輸入車は、長期的なトレンドにすれば、販売店の混乱も防げるので、それが顧客サービスにも直結する。 もちろん、こうした現況を見て、ヤマハなども高価格なV-MAXの国内仕様を投入しているのかもしれないが、その戦略は正しいと言える。 ★結果的に向上した地位 バイクの駐車禁止問題は、バイクメーカーに深刻な打撃を与えたが、私などは、パブリックロードでバイクに乗っておらず、歩行者としての権利を行使していることが多いので、歩道に駐車しているバイクが少なくなったことの恩恵をストレートに受けているので、内心複雑な心境だが、バイクが、駐車違反で捕まる可能性の低い、郊外のツーリングに使われる道具としての役割が増えるにつれ、バイクは、ビクスクのような“便利な道具”ではなく、本来の趣味性の高い乗り物に回帰することだろう。否、すでに回帰している。 また、都内に住んでいる人達も、バイクに100万から200万円も出しているとなると、そもそも自宅前の道路に駐車したりせず、キッチリお金を出してガレージを借りているという人も多くなっているので、こうしたバイクに対して愛情と金をかけた扱いをする人が増えることで、バイクもだんだんと4輪と肩を並べる存在になっていくのだろう。 あ〜あ、オチが優等生チックになっちゃったよ。業界紙でもねーのに、なんでこんなツマンネー文章書き始めたのかね、俺。(笑) ここまで読んで頂いて恐縮だが、これを読む皆さんには、ツマンネーことは考えず、たまに“おかみ”にお布施を支払ったとしても、そんなことは酒の肴にして、(死なない程度に)これまで通りバカっぽくバイクに接して頂きたいと思う。 なぜならば、“自由の象徴”が、バイクの最大の魅力なのだから。 |
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