Erv's Letters index | Text by Erv Yamaguchi |
イスで思い出すこと(2) | |||||||
2009年5月22日 19:13 | |||||||
前回のエントリでは、大田区の町工場の欺瞞性について批判してみたが、そうは言っても、大田区の町工場にも良い点もあった。 それは、恐らく労働基準局辺りの指導が効いているのだと思われるが、どう考えても、労働基準法違反などで裁判を起こしそうなタイプなど1人もいないような職場だというのに、どの工場も、神経質過ぎるくらい、労働基準法は尊守し、職人に対して、サービス残業などは一切させていなかった点だ。 また、私が22歳位の頃、2番目に勤めた工場にて、「製造業というのは、道路族や土建屋と違って、政治家との癒着がほとんどなく、内需ではなく、輸出関連が多く、海外との競争に裸でさらされているので、それが製造業を強くしている要因だ」と、会社の専務が語っていたのを今でもよく覚えている。 私はこの言葉を聞いて、あくまでも労働基準法に則り職人を使い、海外と競争して勝ち残る日本の製造業の存在を自負もしていたし、逆に、政治家と癒着して食いぶちを確保するタイプの道路族とか土建屋とかを、ある種、蔑んで見ていたし、また、サービス残業などで従業員の労働力を搾取する経営者などは、経営者としてというよりも、人間として失格だとすら考えていた。 しかし、労働時間厳守の製造業に長く従事していたせいか、2輪業界を垣間見ると、ほとんどデタラメ調に従業員から労働力を搾取していて、労働基準局が目を光らせる程大きな業界ではないことにアグラをかいた経営者達の格好のターゲットとなっていたのが、正に2輪業界だと言えた。 ★リアリズム 小林ゆきの注目すべき点は、とてつもないオプティミズム(楽観主義)を抱いていることだが、この女はクラブマンで働いた頃を想起し、小野かつじあたりに労働力を搾取されたことを、“小野イズム”とか、“クラブマンの美学”などと称賛し、自分はクラブマンに鍛えられたと、インターネット上で自らの体験に自惚れしてみせた。 こうした脳内お花畑思考は、それはそれで大変 つまり小林ゆきは、他人の労働力を搾取しても平気な小野かつじに利用されることで、クラブマンに“鍛えられた”のではなく、“バカを見た”のである、と。 ★ザット・メイクス・ミー・ピューク 国内2輪専門誌の編集部の、編集部員に対する労働力の搾取っぷりは、労働基準法違反はもちろんとして、ほとんど異常である。 こんな雑誌の存在を延命させているメーカーの罪は重いが、そうやって労働力を搾取しなければ成り立たないということ自体、もはや国内2輪専門誌に未来はないと言える。 しかし、ひどいのは国内2輪専門誌の編集部だけではない。以前にも記述したが、用品店なども、サービス残業サービス早出のオンパレードで、パドック業務の人達や、セールの日などは、食事を取る時間さえほとんどなく、メシ抜きも日常茶飯事だったりするようだ。 ところが、2輪関係の仕事というのはパイが小さいせいで、探すとなかなかないが、その為に、バイクが好きで、その為なら将来の事も深く考えないという若者が、こうした職場に殺到してしまう。そして、その様を第3者的に傍観すると、次から次へと、「自分はバイクが大好きです!」みたいな若者がひっきりなしに訪れるので、とにかく労働力を搾取するだけ搾取した方が得だと経営者が考えているのではないかとすら思える時がある。 また、裏が取れていないので名前は出せないが、メーカーの看板を掲げる結構名のある大手販売店の悪行も凄まじいものがあり、中には、従業員が過労で死んでしまったりして、何度も家族から訴えられているというような店もあるようだ。 また、店がレースに参戦するので、お客さんをレース観戦させるツアーを企画し、従業員もそれに強制参加させ、その参加費を強制参加なのに従業員にも負担させているというのに、有給休暇をそのツアーで消化させるという店もあるようだ。 あと、もっとストレートに悪どいのは、残業していても、定時でタイムカードを押すように命令していたり、そのことを訴えないという誓約書を書かせるという店もある。 正に、トヨタやキヤノンも真っ青という悪行ぶりだが、こんなことが平気で横行しているこの業界に、未来などあるのだろうか? また、本当なら、こうした惨状を取材し、そして告発するのが真のジャーナリズムだと私は考えるが、肝心のジャーナリストが、労働基準法に違反して労働者から労働力を搾取する経営者に対して、“小野イズム”とか“クラブマンの美学”などとトチ狂ったことをほざき、悪を告発するどころか、悪を称賛し美化しているようでは、業界の自浄作用など到底望むべくもない。(もちろん、 こんな体たらくだからこそ、三宅島モーターサイクルフェスティバルにむらがった人達の“弱者を切り捨てた上で投入された税金を利用して売名を図る”という精神構造も醸成されたのだとも言える) 正に、若い人達の“バイクが好き”という気持ちを人質にして悪行を繰り広げる2輪業界関係の経営者に対しては、ザット・メイクス・ミー・ピューク(吐き気がするぜ)だ。
イスで思い出すこと(3) |
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