Erv's Letters index Text by Erv Yamaguchi


『ショックドクトリン』の紹介 2008年2月28日 11:22

 資本主義にて私は、資本主義は労働者階級の不公平感が大きいことを発見したが、では今の日本が福祉が皆無かと言うと、一応福祉というものもある。そして、これが修正資本主義だと、中学生の時に社会科の福島先生に習った。(笑)
 では、資本主義から修正資本主義に切り替わった背景を調べてみよう。資本主義が始まった頃は、とにかく自由放任主義的に放っておけといった、アダム・スミスの考え方が支配的で、本当に超サバイバルな世の中だったようだ。そして、当時の『勝ち組』の間で金が金を生むという投機ブームが起き、その後バブルがはじけると、今度は大恐慌がやってきて、みんな資本主義の失敗に対してビビってしまったようだ。
 この時の失敗から、市場を規制する厳しい法律等が生まれ、不景気になった時には、市場を放っておくのではなく、政府が積極的に介入すべきだという、ケインズというオッサンの考えが採用され始めた。

 こうして、不景気になっても、公共事業などを始めることで失業した人達の仕事を確保し、累進課税などで金持ちから貧乏な人へ所得配分し、社会福祉も充実させるという世の中、つまり修正資本主義という社会がやってきた。

★フリードマン
 しかし、資本家が好き勝手やったら生まれた大恐慌は、市場の失敗と言えるが、世の中が修正資本主義を採用したら、今度は政府の失敗が問題になった。
 つまり、公共事業など、政府が経済に介入しだすと、今度は政府が肥大化し、国民に重税を課す割に、自分達はカラオケセットを買ったりとか好き勝手なことをやりだしたので、国民に不満がたまっていった。
 また、ケインジアン(ケインズというオッサンのワンフー)がそれまで考えていた、失業率を下げればインフレが発生し、インフレを抑制しようと思えば失業率が上昇するという、インフレ率と失業率はトレードオフの関係にあるというフィリップス曲線に対して、70年代以降はこの理論が通用しない状態になり、公共事業や福祉事業による需要創出効果は無駄であり、インフレに対しては、貨幣の供給量を減らすしかないという“マネタリズム”という理論をひっさげて、ミルトン・フリードマンというオッサンが台頭しだした。
 ちなみに、フリードマンとは、全ての規制は撤廃してとにかく全てを自由にすべきという考えの持ち主で、エキセントリック(やり過ぎ)というよりかは、エクストリーム(ありえない)といった印象の人物である。そう、自由(フリー)が“度”を越した男(マン)、それがフリードマンだ。(爆)

 では、このオッサンについて調べてみよう。フリードマンは、ヨーロッパのユダヤ人の抑圧から逃れて海を渡ってアメリカにやってきた東欧の貧しいユダヤ人の両親の間に出来た子のようで、フリードマンは子供の頃から新聞配達などをして頑張って苦学し、その後シカゴ大学の教授になったという、人生自体はお涙ちょーだい調な人物である。
 しかし、そのシカゴ大学に、自由主義思想を持った『シカゴ学派』である、フランク・ナイトとジェイコブ・ヴァイナーという教授が在籍していて、更に、徹底した自由主義と共に反社会主義を唱えた政治哲学者のフリードリッヒ・フォン・ハイエクという人も在籍していて、フリードマンは、こうした人達の影響を受けることで、シカゴ学派の第2世代になったようだ。

 ちなみに、フリードマンがどうしたこんなに極端に自由がサイコーみたいなことを言うのかと言うと、ようするに自分の一族がユダヤ人として受けた迫害が気に入らなかったようで、ソ連やナチスなどの国家から受けた迫害から自由になりたいというのが、その潜在願望だったようだ。つまり、自由主義こそ唯一、国家から自由になれる究極のシステムだと思い上がったようなのだが、こうして、市場には政府が介入すべきというケインズ派と、いやとにかく全部自由にしろよコノヤロー調のフリードマン派のガチンコバトルになったが、フリードマン派はフツーではありえない方法でこのバトルに勝利した。

★ラフファイト
 ロードレースにおいては、サイド・バイ・サイドのバトル中に、隣のライダーに蹴りを入れれば、それはラフファイトとして非難される。
 しかし、一見まともそうな学者同士のバトルにて、フリードマンはラフファイトを行ってみせた。
 それが、カナダのジャーナリストである、ナオミ・クラインが言うところの、「ショックドクトリン」だ。
 ↑では色々と前置きが長くなってしまったが、日本にネオリベラリズム(新自由主義)という猛毒が注入されたことに対するヒントも、↓を見るとウスウス分かってくるので、要チェギである。


「ショックドクトリン 大惨事につけ込んで実施される過激な市場原理主義改革」 ナオミ・クライン新著を語る (『デモクラシー・ナウ!』より)


 1990年にバブルが崩壊してから11年後、長引く不景気の中で日本人の人心が弱まっていた時に、小泉純一郎が突如総理大臣になり、声高に「郵政民営化」を叫び始めた。まるで郵政を民営化すれば全てが解決すると言わんばかりに。そして実際に郵政は民営化されただけでなく、フリードマンの提唱するネオリベラリズム(新自由主義)という概念が日本にスムーズに注入された。これは、ナオミ・クライン流に言えば、不景気という名の惨事に付け込んだ市場原理主義改革だったのかもしれない。




www.romc.jp www.maderv.com www.bugbro.com www.bugbromeet.com